夢見るリアリスト

第4章
女、もっともっと輝いて
―自分の人生は自分で選びとるもの―

女性の身体、男まかせじゃいられない

 堕胎罪って知ってます? そう、人工妊娠中絶をするとその女性と手術を行った医師が罪せられるという法律。しかも理不尽なことには、相手の男性はお咎めなしなんですよ。

「でもそれは戦前までの話だろう」って? とーんでもない。これ民主憲法下の今になっても、刑法第212条としてシブトく生き残っているんです。

 じゃあなぜ私達は中絶できるの? っていう疑問が当然沸いてきますよね。それは『優生保護法』という例外規定が定められているから。その法律の中に記されている条項(例えば遺伝的に問題があるとか、レイプによって妊娠した場合等)のどれか一つにでも該当すれば中絶が合法的に可能なわけ。中でも手術を受ける九十九パーセント近くの女性がこれによっているという規定が“経済的理由”。この“経済的理由”があるお蔭で、決められた妊娠週数までなら、まず誰でも各々の事情で中絶手術を受けられるんです。

「ホホー、お国もなかなか女性たちの身体を慮ってくれているではないか」ですって? 再び、とーんでもない。『優生保護法』ってどうして制定されたか知ってます? 戦後外地からの引き揚げとベビーブームのダブルパンチを受けた政府が、人口抑制の必要性にせまられて作った法律なんですよ。

 何も女のことをいたわって作られたものなんかじゃない。いたわるつもりなら、いの一番に『堕胎罪』を改正・廃止してますよね。要するに、戦時中産めよ殖やせよで中絶を犯罪として取り締った、丁度その裏返し。国家による人口管理、女たちの身体への管理って未だに何にも変わってないのです。

 その証拠にこの『優生保護法』、これまで何度も改正(=女性の立場からすれば改悪)されかからんとしています。具体的にはこの法律から、あの“経済的理由”を取り除いてしまおうというもの。まっ、実質的な中絶禁止ですよね。そんな動きが、一九七二年、一九八二年と二回あった。結果的には女性達の猛反対にあって改正案は国会を通らなかった訳ですが、それならば国会を通さず中絶を制限しようと今回進められたのが手術を受けられる期間の短縮(一九九〇年、三月二十日決定)。これまで二十四週に達していなければ受けられた手術が二十二週末満までと、二週間期間がせばめられたのです。驚いたことに、期間の短縮だったら当時者の女性の声を聞くこともなく密室審議のまま決定してしまえるんですよ。しかもこの短縮、取材を進めてゆくと蔭でうごめいているのはやはり中絶を禁止したいと願っている人々。その中心的人物とも言える国会議員に、

「どんな思いで女性達が中絶するか知っているんですか?」

 と質問したところ、

「ニキビか吹出物でも取るような気持ちでしょ」

 という、腸煮えくり返るような答えが返ってきました。

 これは極端にしても、やはり自分が痛くも痒くもない男性の認識なんてどーせ五十歩百歩。となれば女性たちよ、黙って良い子になっていて、しかも思い通りにしてもらおうなんていうのは虫のいい話。甘えるところは甘えながらも、言うべき時にはしっかり権利を主張し、相手を説得できる女でありたいですよね。