“噴飯もの”―あまりのおかしさに、食べかけていた口の中の飯を吹き出してしまうこと。
先日(一九九〇年八月二十七日)、厚生省が出生率低下への対応策として取り組んでゆくと発表した『子育て減税』なるものの内訳。
聞いて驚くなかれ、夫三十七歳(平均年収四八〇万)、妻三十五歳(同二八〇万円)、子供二人の共稼ぎモデルケースの場合、年額三万五千円! 月々わずか三千円ポッキリ!!これで子供を産め。て言うんだから、もう怒りを通り越して情なくさえなってくる。
でもこんな端金で対応策と言ってしまえるのは、何もお役人の方々が厚顔なのではなく、今、子育てがいかに困難な状況にあるか、その実態をお勉強なさる機会があまりにも少ないからではないでしょうか。
とすれば、うるさがられようが、煙たがられようが、やっぱり私達女性から「ここをこう変えて!」「ここがおかしい!」と訴えてゆかなければ事態は一向に改善されない。改善されるどころか、ともするとトンチンカンな思い込みで、「やっぱり女を家庭に戻すしかないかぁ」などと改悪に走られることにだってなりかねない。
そこで早速ご提案だが、出生率向上の切札は私はいまや男性こそが、握っていると思うのだ。男性がどれだけ妻の家事や育児をシェアできるか。それを真剣に論ぜずして、この問題の解決はあり得ない。しかも最近のヤングビジネスマンは、結構“子育て”や“子供”に興味を示している。年賀状をわが子のアップショットのブロマイドにして送ってくる男性は年々増える一方だし、週二、三回は子供をお風呂に入れたいと今どきのビジネスマンは上司とのつきあいを断わることもものともしない。
トレンディドラマの主人公は、柴田恭兵でも柳葉敏郎でも田村正和でも、今や子供にまとわりつかれて男の優しさを演出しているし、九月号の『流行通信オム』だって“都市は子供を求めてる”と題して、子連れこそこれからの男のトレンドと論じていた。今や、家事や子供にかかずりあうなど仕事のできない男がすることといった神話は、子供を持つあるいは持つ可能性がある世代の間では完全に崩れつつあるのだ。
とは言うものの、企業のトップを牛耳る世代にはこの感覚は理解できないらしい。男性に育児休暇ならずとも育児に伴う遅刻・早退を認めてくれれば、せめて保育所への送り迎えだけでも実の親が必ずしてあげられるのに。現在、大抵の保育所の始まりが出社時間と同刻、終わりは午後四時半などととても定刻退社では間にあわない為、預け替えの“二重保育”や送迎の為に誰か人を頼むのが常である。その為の費用で大概妻の分の給料はチャラ、中には持ち出しという例だって少なくない。
一週間に、三歳以下の子を持つ男性が就業時間を四時間短縮できたら、今回の『子育て減税』の何倍の経済効果が家庭にあらわれることだろう。更に子供と夫、夫と妻の絆を深める意味でのプラスの効果も考えたら、ぜひとも一日も早い実施を願ってやまない。