日米防衛協力のための指針に関する 特別委員会(平成11年5月17日)

質問テーマ

[新ガイドラインに基づく今後の日米協力のあり方]ガイドライン関連法案

質問のポイント

  • 今回の周辺事態法案に基づくシミュレーションを行い、 それぞれの事態におけるシナリオとその具体的な対応について十分問題を整理しておくべき。 シミュレーションを行って、 今後起こり得る危機に対する認識を国民と共有することによって、 地方公共団体や国民一人一人とこの法案とのかかわり方、 協力の仕方というものが明確になってくると思うが如何か。
  • 日米防衛協力を実行有らしめるため、最も重要な事項の一つが、 「情報機能の相互協力体制の整備」である。
    現在米軍の情報機能は、従来の縦割り型(ストーブパイプ型)から、 組織横断的なシームレス型へと大きく移行している。 それに対し、わが国の防衛体制は昨今高度化が図られているが、 まだその組織体制はもとより、要員の意識からして縦割りのままで、 シームレスを実現するのは難しい。
    今後、C4Iに基づき行動を展開する米国との間で、相互運用上問題は生じないのか。 また、新ガイドラインを実行するにあたり改善の余地がこの情報機能に関してあるとすれば、 具体的にどのような措置が必要なのか。
  • これからの軍事作戦は、 相手の通信ネットワークを攻撃して情報伝達系を破壊もしくは攪乱するという、 いわゆる「情報戦争」に大きく、しかも急速にシフトして行くと思われる。 こうした傾向に比例して、 暗号技術を初めとした「情報セキュリティ」の整備が日米協力の中でより重要性を増して行くことになるが、 米軍と共通の「情報セキュリティ規格の制定」も含め、 今回の協定でこの問題はどのように盛り込まれているのか。
  • 日米間でシームレスな情報管理体制を整備したとしても、 日本国内の防衛体制が縦割りのままでは、日米防衛協力の方も実効は望めない。
    今後、警察、海上保安庁、防衛庁、そして外務省、 それぞれの情報機能に関する連携の強化、 そしてそれ以前に陸海空の三幕間での情報共有体制の整備など、 国内の環境整備にも多くの課題があると思うが、どのように対処して行く予定か。
  • 静止衛星ではない情報収集衛星では、 定点的にミサイル発射の瞬間を捉えることはできない。 つまりミサイル防御を日本が実現するためには、 朝鮮半島上空に位置する米国の早期警戒衛星からリアルタイムで情報を提供してもらえる情報体制の構築が必須である。
    更には、日本の情報収集衛星から送られてくる画像情報も、 そこから単なるインフォメーションではなくてインテリジェンスと呼べるほどの防衛に価値ある情報を得るためには、 熟練した解析体制を整備する必要があり、 そのためにも米国の協力は欠かせないものである。
    こうした問題に関して、 米国との協力体制はどのように図られることになっているのか。
  • 情報収集衛星の解析要員の養成がこれから始まっていくと思うが、 どれぐらいの人数をどういう機関、 どのようなところで養成することを考えているのか。また、 どのようなシステムを地上系として導入することを考えているのかあわせて伺いたい。

質疑要旨

畑 議員

 わが国の安全保障にとって、 日米同盟のより一層の強化は常々欠くべからざるものと認識しているが、 今までのさまざまな法案審議を聞いていても、 今回のガイドラインに基づく日米協力が、 そもそもどのようなシナリオのもとで行われているか、 依然不透明であるという感が否めない。シナリオの大筋を国民に示すこと、 たしか先日、本委員会で椎名議員は「設計図」 という含蓄のあるお言葉を使われたと記憶しているが、 その大枠を示すということが今最も必要な気がする。
 どのような事態に対し、日本がどのように関与して行くのか、 その具体的なシナリオが余りにも漠としていることが、 国民の不安感を必要以上に煽り、平和と安全を守るための新ガイドライン3法案を、 あたかも参戦に道を開くための法案のように多数の人が誤解してしまっていることは大変残念なことである。
 そこで私は、少々青臭いと言われるかもしれないが、ここは一度原点に立ち戻って、 今回の周辺事態法案に基づくシミュレーションをある程度行い、 それぞれの事態におけるシナリオとその具体的な対応について十分問題を整理しておくべきだと考える。
 私がここで言うシミュレーションとは、 リムパックなどの日米共同演習でのいわゆる机上シミュレーションにとどまらない。 リムパックで想定されるような戦闘状態に至るまでには、 実際にはさまざまなグレーゾーンがあり、 (今国会では多くの議員の方々が、「黄色信号」という言葉を随分使われていたが)、 そうしたさまざまな事態を想定して、政治の動き、行政の動き、 あるいは世論の反応などを包括してシミュレーションして、 国民全般に起こり得る危機というものを目に見える形で提示することが必要ではないかと考える。
 シミュレーションを行い、 今後現実に起こり得る危機に対する認識を国民と共有することによって、 地方公共団体やそれを支える国民一人一人とこの法案とのかかわり方、 協力の仕方というものがおのずと明確になってくると思うが如何か。

野呂田芳成 防衛庁長官

 防衛庁としては、 これまでも任務遂行のために必要な研究を常日ごろから行っているわけであるが、 この法律が成立した場合には、この法律に規定される自衛隊の活動を含め周辺事態に際して自衛隊が行うべき活動についての検討を防衛庁内で行っていくことは当然と考えている。 私としても、自衛隊の出動等が必要とされる重要事態が発生する場合における所要の対応のあり方について、 防衛庁内に重要事態対応会議を設置して、目下鋭意検討を行っているところである。 今後とも、遺漏なきを期していきたいと考えている。
 ただ、これらの検討の具体的な内容については、 緊急事態の対応にかかる問題であることから、 その内容を明らかにすることは適切ではないと考えている。 しかし、防衛庁としては周辺事態において日米が行う活動について、 幅広い理解を得るために中間報告等の公表など、 指針見直し過程における透明性の確保に努め、 見直しの過程におけるさまざまな議論を踏まえて、 自衛隊の行う活動を新たな指針において整理して示しているところである。
 今後とも、 国会における説明等を通じて理解を得られるよう努力していきたいと思う。

野田毅 自治大臣

 私は率直に言って、ややもすれば戦後のいろいろな過程の中で、 危機そのものを想定しない、危機をもたらさないことが政治家の努めではないか、 という議論があったが、それはそれで願望として間違っているものではなく、 非常に貴重な考え方であると思う。 しかし、国民の生命、財産を断固として守り抜くということは、 政府のあるいは国家としての一番大事な役割で、その点について万が一、 日本が何も悪いことをしなくても何かあり得るかもしれない、 そういうときにどう対応するのか、 ということについてあらゆる角度からきちんとした対応を平時にこそ決めておくことが大事ではないか。
 関係省庁において、具体的な事態を想定してのことではないにしても、 せめて体制整備、法制面、関係省庁の連絡体制、 そういったことについてもきちんとした対応をしておくべきではないかというような問題意識から何か試みようとしたときに、 国会においていろいろな議論が起きたが、 結局それは時期尚早であるということでなかなかその先には進めなかったということを繰り返してきた。 これは、良い悪いという価値判断は別として、厳然たる事実であると思う。
 しかし今回の場合、この周辺事態法案というのは日本の平和と安全と全く無関係な事柄を周辺事態と言っているのではないのであって、 ここのところをもう少し理解されるべきではないかということを今まで言ってきたのである。 そういう点で、畑議員から非常に真摯な質問を頂き、 改めてその思いを痛感している次第である。

畑 議員

 情報公開の仕方というのは、先ほど野呂田防衛庁長官が言われたように、 非常にセンシティブな問題であり、難しいということはよく存じ上げている。 ただ、だからといって全部覆い隠してしまうとかえって大きな誤解が生じてくる。
 今も反対デモの太鼓の音が聞こえてくるが、 あのように国会の前にずっと座り込みをしている方々を見るにつけ、 どうしてこういう誤解がそのままになってしまっているのだろうかと、 私はいつも胸を締めつけられる思いがする。 一人一人の国民の方々にしっかりと説明をすることが私ども政治家の一番の役割であると思っているので、 本当に力足らずである我身を悔いている。
 実際にシミュレーションを行えば、 現行法の中で行える日本の防衛活動がいかに制限されたものであるかということが、 恐らく国民の皆さんにもわかっていただけると思う。 また、実際に国民を救うことが、現行法の下ではいかに困難であるか、 同時に防衛活動に現場で当たる方々にいかに多大な苦難、苦痛を強いるものであって、 ときには犠牲までも引き起こしかねないということが、 国民の皆さんにもよくわかっていただけると思う。
 私は国会議員としては、下から数えて何番目かの若輩議員だが、 先日の宮沢大蔵大臣の元首相としての、率直なご答弁には、深く共感し感銘を受けた。 国民の皆さんに、今何を考えて、 どういう行動をしているのかを知ってもらうための国会審議であるので、 そういう本音ベースの御意見を大いに拝聴できれば大変ありがたいと思う。 またなかなか難しいとは思うが、 そうしたシミュレーションの前段階ぐらいまででも情報公開がなされて、 1歩でも2歩でも国民の皆さんと私どもの距離が近づけるようになればと期待している。
 次に、情報機能に関する相互協力体制の整備について伺いたい。 新ガイドラインに基づき日米防衛協力を実行有らしめるため、 最も基本的な重要事項の一つが、「情報機能の相互協力体制の整備」 ではないかと認識している。
 なぜかというと現在米軍の情報機能は、 ジョイント・ビジョン2010を背景とした統合情報システムが構築された結果きわめて高度化され、 また従来の縦割り型、いわゆるストーブパイプ型から、 組織横断的なシームレス型へと大きく移行している。
 それに対し、わが国の防衛体制は確かに昨今急ピッチで高度化が図られているが、 私も市ヶ谷の「情報本部」を視察したところ、まだその組織体制はもとより、 要員の意識からして縦割りのままであり、 シームレスを実現するのはなかなか難しいというのが実感である。
 今後、C4Iに基づき行動を展開する米国との間で、相互運用上、問題は生じないのか。 また、新ガイドラインを実行するにあたり改善の余地が情報機能に関してあるとすれば、 具体的にどのような措置が必要なのか伺いたい。

野呂田 防衛庁長官

 畑議員御指摘のとおり、 米国との間で相互運用性を確保することは我が国の防衛上極めて重要な問題である。 このような観点から、我が国としては、 従来より米軍との通信手段の確保を含め米軍との相互運用性の向上に努めてきたところである。
 新しい指針の実行に当たり、 米軍との相互運用性を確保する上で必要となる措置の具体的な内容については今後の検討を待つべきものであるが、 いずれにせよ、米国はC4Iを極めて重視しているところであり、 新ガイドラインの実行性を確保するためにも、防衛庁としては、 このような米軍との相互運用性の確保を念頭に必要かつ十分な検討を行っていきたいと思っている。

畑 議員

 米軍の陸海空三軍がそれぞれに展開しているプロジェクトがあるが、 それらとわが国の三幕との連携というのはどうなっているのか、 詳細に説明していただきたい。

柳澤協二 防衛庁運用局長

 ジョイント・ビジョン2010に基づいて、 以前は米軍の方もC3Iという概念でやっていたが、 コンピューターを一つ付け加えてC4Iとして相当近代化を進めているということは承知している。
 グローバルに軍隊を展開し、 そして大統領の指揮命令と現地司令官の判断の間のパイプをシームレスで太くするという相当大きなニーズを持った米軍と比べると、 我が国の自衛隊は基本的には専守防衛であるため、 若干その規模等の違いは当然生じるわけである。 しかし一方では、コンピューター化が自衛隊の方でも進んでおり、 特に来年から運用を開始する市ヶ谷の新中央指揮システムに合わせて、 陸海空それぞれが進んだ指揮システムあるいは情報の集約システムを現在構築しつつある。
 例えば陸上自衛隊では、 方面隊の指揮システムと陸幕のシステムをオンラインで繋げて、 さらにそれが中央指揮所において中央システムという形に集約されるようにしている。
 陸海空それぞれでは、現場レベルと中央の幕僚レベルと両方あるが、限定的ながら、 それぞれ共通の通信器材を保有する、 あるいは一部データ交換のできるシステムを持つなどして、 中央同士のやりとりと現場同士のやりとりが可能になりつつあるという状況である。

畑 議員

 情報共有体制に向けて着々と進んでいるということだが、 そうなると一方で重要性を増してくるのがネット上での「セキュリティ」である。
湾岸戦争の際、多国籍軍による航空攻撃が開始されてわずか28分後に、 イラク軍がほぼ完全に指揮統制機能を失った。 これは、米軍がイラク軍の情報機能を攻撃し、 それを麻痺させてしまったからであると言われている。このことからもわかるように、 これからの軍事作戦は、 相手の通信ネットワークを攻撃して情報伝達系を破壊もしくは攪乱するという、 いわゆる「情報戦争」に大きく、しかも急速にシフトして行くと思われる。 こうした傾向に比例して、 暗号技術を初めとした「情報セキュリティ」の整備が日米協力の中でより重要性を増して行くことになるが、 米軍と共通の「情報セキュリティ規格の制定」も含め、 今回の協定ではどのようにこの問題は盛り込まれているのか。

野呂田 防衛庁長官

 畑議員御指摘のとおり、 指揮・通信システムの抗堪性の向上とかコンピューターシステムにより処理される情報の保護や機能の保全等の各種措置の推進は重要と考えている。
 新ガイドラインにおいては、日米共同作業の一環として、 自衛隊及び米軍が日本の防衛のために整合性のとれた作戦を円滑かつ効果的に実施できるよう、 共通の実施要領等をあらかじめ準備しておくこととされている。 この際、自衛隊及び米軍は、通信電子活動等に関する相互運用性の重要性を考慮し、 相互に必要な事項を定めておくと規定している。
 御指摘のセキュリティーについては大変重要な問題であるので、 そのような作業の一環として目下検討中であり、 これからも検討を重ねていく所存である。

畑 議員

 情報の共有化・シームレス化が進むと、 今度は防衛関係だけではなく民間の通信機能のさまざまなアーキテクチャーも使うことになるので、 セキュリティー問題については真剣に取り組んでいただくとともに、 十分な予算もきちんとつけて、ぜひスピードアップを図って対処していただきたい。
 さて、そうして日米間でシームレスな情報管理体制を整備したとしても、 日本国内の防衛体制が縦割りのままでは、日米防衛協力の方も実効は望めないと思う。
 先ほど三幕間の連携体制、協力体制という話を伺ったが、今後、警察、海上保安庁、 防衛庁、そして外務省、 それぞれの情報機能に関する連携の強化が図られなければいけないと思う。 陸海空三幕の間での情報共有ということについても、 当然秘匿はしっかりとかけるわけだが、例えば共通のデータベースをつくっておいて、 必要なときに必要な部署が情報を取り出し作戦を組めるような体制を構築していかなければいけないと思うが、 そうした国内の環境整備にはどのような課題があり、どのように対処して行く予定か。

野呂田 防衛庁長官

 現下の不透明で不確実な国際情勢において、 専守防衛を旨とする我が国においては、 情報機能の充実はより一層重要になってきていると認識している。 その一環として、陸海空の三自衛隊の間、あるいは防衛庁と関係省庁との間において、 情報面で緊密な連携を維持することは極めて重要なことであると考えている。
 防衛庁としても、 従来からそのような観点に立って鋭意情報機能の強化に努めてきたところであり、 このような努力の一環として、 平成9年1月に防衛庁の中央情報組織として情報本部というものを新設したところである。
 従来、内部部局、各幕僚監部、 統合幕僚会議などの各々の情報組織がそれぞれ独自に情報業務を行っていたため、 防衛庁全体としての情報処理や分析が必ずしも効率的に行われなかった。 そこでそれを改めて、この情報本部において各種情報を集約し、 総合的に処理分析して自衛隊全般を通じて必要とされる情報などを作成し、 関係機関に配布することとしている。
 防衛庁としては、今後とも、 情報本部の機能及び運用体制の充実を図っていきたいと考えている。  また、従来から情報業務に関した関係各省庁との緊密な連携を図ってきたところであるが、 先般の北朝鮮の弾道ミサイル発射事案やあるいは不審船事案などを経て、 このような連携の重要性を一層認識しているところである。このため、 関係省庁との間の情報に関する連携や協力を一層緊密なものにしようということで、 防衛庁に重要事態対応会議を設けてそのような問題について連日熱心に検討しているところである。

高村正彦 外務大臣

 我が国の情報機能の強化については、 御指摘のようにまさに政府全体としての問題であり、外務省においては、 今後とも情報の収集分析及び報告に関する機能の充実強化に努めていく所存である。
 具体的に言うと、例えば昨年10月27日の閣議において内閣情報会議が設置され、 政府全体の情報機能強化についての具体的施策が図られたところである。 今後とも、我が国の安全保障等に資するため、政府全体としての情報機能の強化、 体制整備について外務省としても努力していきたいと考えている。

野田毅 自治大臣 (国家公安委員長)

 この問題は、防衛体制ということのみならず、警察庁においても、 海上保安庁、防衛庁、外務省等いろいろ関係省庁と平素から緊密な情報交換を行って、 いろいろな事柄に対して的確な対応がとれるように平素から体制を整えているところである。

畑 議員

 ノンフィクションではないが大分話題にもなった麻生幾氏著「宣戦布告」 という本がある。実際の状況はその本に描かれた内容とは違うという話もよく伺うが、 その本の中に、それぞれの情報機能、 特に連携が難しくてなかなか事態の収拾に向かわないという状況が描かれている。 現実にはぜひそのようなことにならないよう、 公開はできなくても内部では十分なシミュレーションを行って連携を図っていただきたいと思う。
 最後に情報収集衛星について伺いたい。
 日本は北朝鮮のテポドン・ミサイル発射以降、 情報収集衛星を保有することを決定したわけだが、御承知の通り、 静止衛星ではない情報収集衛星では、 定点的にミサイル発射の瞬間を捉えることはできない。 つまりミサイル防御を日本が実現するためには、 朝鮮半島上空に位置する米国の早期警戒衛星からリアルタイムで情報を提供してもらわなければいけないが、 この体制の構築というのはなかなか難しいと思う。
 更には、日本の情報収集衛星から送られてくる画像情報も、 そこから単なるインフォメーションではなくてインテリジェンスと呼べるほどの防衛に価値ある情報を得るためには、 熟練した解析体制を整備する必要があり、 そのためにも米国の協力は欠かせないものである。
 こうした情報収集衛星をめぐる問題に関して、 米国との協力体制は今どのような段階に至っているのか、 この場で話せる範囲で結構なのでお答えいただきたい。

野呂田 防衛庁長官

 日米安保体制の下、 我が国政府は従来より米国との間で必要な情報交換を行っているが、 この一環として平成8年4月より早期警戒情報を受領できる体制になっているところである。
 この早期警戒情報は、我が国に対して飛来する弾道ミサイルに関する予想データを、 発射後短時間のうちに米国が解析して自衛隊に伝達する情報である。 昨年の8月の北朝鮮における弾道ミサイル発射事案においても、 迅速に米国から私どもに伝達されたところである。
 また、情報収集衛星の導入については、 内閣官房を中心として政府一体となって取り組んでいるところである。 防衛庁としても、これまで画像情報業務を通じて得た情報、 画像解析等に関する知見を活用して情報収集衛星の解析体制の整備に協力していきたいと思っている。
 また、米国は我が国の同盟国であるとともに、 衛星画像データの解析に多大の経験を有しており、情報収集衛星の導入に当たっては、 解析要員の養成のための協力を含め緊密に連絡をとり合っていくものと考えている。

畑 議員

 解析要員の養成がこれから始まっていくと思うが、 どれぐらいの人数をどのくらいの期間、 どのようなところで養成することを考えているのか伺いたい。
 そして今、防衛庁もイコノスに対応する形でIMSSなどターンキーシステムで地上系を導入していると思う。 ターンキーというのは一つ鍵を回せばすべてが動くかわりに、 中はブラックボックスでどうなっているのかわからないというシステムであるが、 こういう形のまま導入していると日本の中に技術が蓄積されないし、 いざというときに本当に日本が自分自身の国を守れるのかという点で不安が残るような気がする。 今度の情報収集衛星ではどのようなシステムを地上系として導入することを考えているのか、あわせて伺いたい。

佐藤謙 防衛庁防衛局長

 情報収集衛星の問題については、先ほど防衛庁長官の答弁の中にもあったように、 内閣情報調査室がこの取りまとめ役となって、そこを中心として検討している。
 したがって、防衛庁から言えることには限界があるが、 解析要員の養成はかなりの規模のものが必要であり、 また、平成14年度に打ち上げるということを考えると、 時期的にかなり急ぐ必要があるだろうと思われる。よって、 その規模と実際にどのような形で要員を養成していったらいいのか、 アメリカに協力をしてもらうわけだが、 どういう形で協力してもらうのがいいのかということを含めて、 今、関係省庁と共に鋭意検討中である。
 それから、私どものIMSSの件であるが、 解析度1メートルというアメリカの商業衛星からの情報が入手可能であるという状況を踏まえて、 そのデータを情報活動に効率的に活用するために平成9年度から整備に着手しているところである。
 一方、情報収集衛星については、我が国で開発を進めるということなので、 ターンキーシステムという形にはならないと考えている。