経済産業委員会(平成11年3月30日)

質問テーマ

[特許権の「広く強く早い保護」]特許法改正法案

質問のポイント

1. 特許法改正

  • 権利取得のための審査請求期間を現行の7年から3年に短縮するのは結構だが、 なぜ欧米より長い3年という期間に設定したのか。 できるだけ請求期間は短縮、あるいは無くすべきではないか。
  • 製品寿命が短いハイテク製品にとっては侵害訴訟期間の長さは致命的である。 既に日本企業同士でさえ、訴訟を米国で行うといった現象が目立ち、 日本の司法制度は空洞化の一途をたどっている。このままでは、「遅い司法」 に足を引っ張られて我が国は国際競争力から脱落しかねない。 このような事態を通産大臣はどのように認識しているか。
  • 「早い司法」の実現に向け、抜本的な司法改革が早急に必要。 司法試験合格者を大幅に増やせば、迅速な司法を実現するのみならず、 法律以外の専門知識や資格を持った人材が弁護士になることになり、 司法の質の向上にも寄与すると思うがいかがか

2. 知的財産権の保護

  • 先進各国が知的財産権というテーマを国家戦略上の主眼に据え、 その所有権を巡って熾烈な競争を繰り広げているが、 そうした国際舞台の実態と日本政府の現在の取り組みについて伺いたい。
  • 現在分野別に複数の省庁が所管している知的財産権政策を一本化し、 「知的財産庁」とでも呼ぶべき機関を作って、 国家戦略的に知的財産権政策に取り組める体制を一日も早く創出すべき。 これを成し得るのは、まさに政治家であるわけだが大臣の見解を伺いたい。
  • 情報コンテンツの加工や複製がきわめて容易に、 かつ劣化することなく繰り返すことのできるデジタル・ネットワークにおいて、 著作者人格権の保護規定をはじめとして、 現行の著作権に関する諸規定がコンテンツの流通・利用の実態にそぐわなくなっているという声をよく聞くが、 このような実態に政府はどのように対応するつもりか。

質疑要旨

畑 議員

 今回の特許法改正は、 前の通常国会での改正で積み残された様々な課題について、 そのほとんどに対する施策が盛り込まれた、 言わば特許法大改正の完結編であると認識している。 本委員会に於いても昨年全会一致で附帯決議を付けさせて頂いたが、 そこに書き込まれた各事項についても、例えば文書提出命令の拡充、 計算鑑定人制度の創設など、具体的な措置が今回実現することは、 大いに評価させて頂きたい。
 中でも裁判官の裁量・判断によって、 たとえすべての侵害地における販売数量の立証が困難でも、 蓋然性のある事実まで考慮して「実質的な」規模の損害賠償が可能になる道が開けたことは、 誠にもって朗報である。 是非、米国の三倍賠償に勝るとも劣らないような勇気ある裁定を下して頂いて所謂「侵害のやり得」を一掃し、 損害賠償の認定額についても、平均100億円規模といわれる米国に比べて、 現在200分の1程度に過ぎないわが国の現状を打破して頂きたい。
 これまで特許庁は特許法の改正に当たって、「広く強く早い保護」 をそのスローガンに掲げていたと思うが、まずはこの早さ、迅速さについて伺いたい。
 今回の改正では、 権利の取得を早めるために審査請求期間を現行の7年から3年に短縮する。 デファクト・スタンダードの獲得が国際競争に勝ち抜く上での大命題である今日、 特許権の取得が欧米に比して遅れれば、 それだけ日本がデファクト獲得で不利になることは明白である。
 従って、審査請求期間の短縮は当然の措置であるが、欧米諸国と比べた場合、 欧州特許庁は2年、米国は特許制度が日本とは違うが審査請求期間自体が無い。 なぜ今回、期間を短縮したにもかかわらず、 欧米より長い3年という期間に設定したのか。

伊佐山建志 特許庁長官

 畑議員御指摘のように、 欧米と日本では審査請求期間についてそれぞれ異なった制度をとっている。 これは、それぞれの国のよって立つ制度的、歴史的、 文化的な背景等を勘案したものだと理解している。 特に特許庁としては、米国の制度はともかくとして、 欧州の制度にできるだけ近づけることは決して悪い考え方ではないとの認識の下、 欧州の制度を十分勉強しながら今回の制度改正に当たった。
 欧州特許庁では、出願から一定期間経過後に先行技術調査の結果である 「サーチレポート」を公表するという制度を設けている。 従って、出願者は相対的に短期間で審査請求の要否が判断できることになっている。
 わが国にはこのような制度がないので、 審査請求期間を過度に短くすることによって、 出願する側が発明を再評価することを十分に行えないまま審査請求するということは、 出願する側に過度の負担を要求することになるので2年ではなく3年にした。

畑 議員

 過去の背景については私自身もある程度知っているつもりだが、 大手企業やベンチャー企業等に話を聞くと、無駄な審査料は払いたくないので、 できるだけ審査請求期間は短く、できれば無くしてもらいたい、 あるいは審査料を下げてほしいというのが大方の要望なので、 是非今後の動向を見守りつつ検討して頂きたい。
 さて「早さ」という点でもう一点、侵害訴訟手続きの迅速化について伺いたい。
 昨今、時間がかかり過ぎる日本での訴訟を避け、 日本企業同士でさえもその訴訟を米国で行うといったケースが大変増えてきている。 米国で知的財産権に関する訴訟を起こすと弁護士費用だけで年間1億から2億円と日本の5倍以上かかると言われるが、 それでも裁判を起こすために米国にわざわざ事務所を置く企業まである。と言うのも、 何事につけ今の市場というのはスピードの速さこそが企業競争力の要であり、 特に製品寿命が短いハイテク製品などにとっては訴訟期間の長さは致命的である。 このままでは日本の司法制度は空洞化の一途をたどるのではないか。 それだけならまだしも、 その「遅い司法」に足を引っ張られてわが国の国際競争力に陰りが見えるのではないかと危惧している。
 このような事態を、我が党の知的財産権議員連盟の会長であり、この問題に大変造詣の深い与謝野通産大臣はどのように認識しているか。

与謝野馨 通産大臣

 畑議員の言われるように、 日本の企業同士の係争にアメリカの裁判制度を利用するというのは大変おかしなことである。 いわば司法の空洞化と呼ばれる現象で、私は大変重大な問題だと認識している。
 また、知的財産権の重要性が高まる中で、 侵害訴訟を迅速かつ適切に解決することは日本の競争力を高める上でも大変重要であり、 不可欠な問題であると思っている。
 今回の特許法改正案は、権利侵害に対する救済措置の拡充を図るため、 侵害訴訟の各段階に応じて、まず第一に侵害行為の立証の容易化、 第二に損害の計算の容易化、 そして第三に実質的な規模の損害賠償の実現等の規定を体系的に盛り込んでおり、 早く広く強い保護の実現を目指している。
 この改正法の趣旨を踏まえた適正な運用が行われることにより、「侵害し得」の社会が是正され、 国内の裁判制度の活用を通じて知的財産権侵害に関する紛争が迅速に解決されることを期待している。

畑 議員

 今回、特許法の改正を2度の通常国会にわたって審議したこと自体は、 日本の知的的財産権保護に大変大きく寄与するとは思うが、繰り返しになるが、 それだけでは解決しない「司法」という大きな問題も残っている。 今回の改正では裁判所と特許庁をオンラインで結んで紛争解決の迅速化を図ることが大きな柱として掲げられているが、 いくら特許庁サイドが努力をしてもやはり努力にも限界がある。 是非法務省とも連携をとって頂きたい。
 そこで、法務省に”司法#の実態について伺いたい。
 法務省は「早い司法」の実現に向け、 今年度から司法試験の合格者を700人から1000人に増やすというように、 現在の実態を何とか是正しようという意気込みは感じられるのだが、 はっきり申してこれでは焼け石に水である。 私のみならず各所からそのような声が聞こえてくる。
 現在、日本の弁護士は1万6800人、これに対して米国は88万人。しかもこの数の差は、 単なる量的な違いに留まらず質の差も生み出していると思われる。 というのは、米国では弁護士資格を持っている人間が非常に多いので、 何か専門的な知識が無ければ生き残れず、 その結果として労働問題や知的財産権問題などの分野を専門とする弁護士が自然に生まれてくる。 また試験が日本のような狭き門ではないので、 法律だけに特化した勉強をするのではなく、 法律以外の様々な専門知識や資格を持った人が数多く弁護士になれる。
 米国のように余りにも過剰な訴訟社会というものを私自身も望むわけではないが、 それにしても我が国の抜本的な司法改革は早急に行わなければならない。 法務省としてはどのような見解を持っているか、 あわせて通産大臣にももう一度この「司法改革」について御意見を伺いたい。

河村博 法務省司法法制課長

 司法試験合格者を年間1500人程度に増加するということが、 政府の規制緩和推進三ヵ年計画に取り上げられている。
 国民の権利、利益の実現、法秩序の維持という法曹の果たすべき役割と職責の重大性に鑑みて、 司法試験合格者の増加に当たっては国民の負託にこたえるに足る水準、 質を確保することが必要であり、 これからの社会のニーズに的確に対応していくために、 畑議員御指摘のような知的財産権などの高度で複雑な法律問題にも対応できる法律専門家を養成していくということが極めて重要であると考えている。
 司法制度の改革という点については、内閣に司法制度改革審議会を設置して、 そこで21世紀の日本社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、 司法制度の改革と基盤の整備に関して必要な基本的施策について国民的見地から調査、 審議するという法案を現在国会において審議しているところである。
 法務省としては、この審議会における動向などを踏まえながら、 法曹の質及び量の充実強化に今後とも努めていきたいと考えている。

与謝野 通産大臣

 畑議員御指摘のように「早い司法」、の実現というのは、 我が国の企業同士の特許侵害訴訟が海外で行われるなど司法の空洞化が問題となっている状況の中で、 私としてはこれは喫緊の課題であると考えている。
 特に特許権の場合は土地の所有権などと異なって、 権利の期間に一定の制限が設けられているので、 限られた期間の中で権利を十分享有するためには、 権利侵害が発生した場合速やかな紛争解決が求められるわけである。
 また、独創的な技術開発を推進していくためには、 先行投資に見合うだけの適正な利益回収が確保される必要があり、 侵害行為があった場合には迅速に適正な損害の補償が受けられるようにすることが求められている。
 今回の改正案は、以上のような特許侵害訴訟の迅速化の要請を踏まえて、 特許侵害に対する救済措置を拡充するために制度改正を行うものである。 また、特許庁と裁判所との間での協力強化の観点から、 侵害情報の相互交換を制度化するとともに、 特許庁から裁判所への専門の調査官の配置や技術的見解の提供の強化を図ることとしている。
 今後は改正法の趣旨を踏まえ、 裁判所において適正な法運用が行われることにより「早い司法」が実現していくことを期待している。 また、今後とも特許庁及び裁判所が協力関係の強化を図りながら、 それぞれの観点から紛争処理機能の強化に向けた取り組みを行っていくことが重要と認識している。
 なお、裁判所の方でも特許侵害に関しては、 その重要性に鑑みて多少の人員の増強を図っていることを付言する。

畑 議員

 一つの省庁の中では解決できない問題が多分これだけの改革につながっていると思うので、 私ども政治家も連携を密にしながら司法改革を進めていきたいと思う。
 さて、ここからは多少法案からは離れるが、関連ということで知的財産権全般について伺っていきたい。
 知的財の価値が急速にクローズアップされてその重要性を増しているということは先ほど通産大臣も言われたとおりであるが、 今後さらにグローバル、ボーダレスになって全世界的に波及していくことは必至だと予想される。 既に、バイオとか情報通信の分野では先進各国が知的財産権というテーマを国家戦略の主眼に据えて、 これまでに発明、発見あるいは創造された様々な知的財というのをいかに自分たちのところに取り込むかと熾烈なバトルを繰り広げていると聞く。 まずそうした国際舞台での状況と日本政府の現在の取り組みについて特許庁長官から御報告頂きたい。

伊佐山 特許庁長官

 畑議員御指摘のように、 今や世界の市場でそれぞれの企業家が競争するような環境になっている。 日本は日本として自らの強い部分というものを今後いかに強めていくかということは当然の課題として私どもも認識しているが、 アメリカ、ヨーロッパにおいても決して手を緩めているわけではない。 バイオテクノロジーとか通信情報関係の技術開発などについて、 ただ単に技術開発を進めるだけではなく、 知的財産権という制度を上手に使いながらその産業の発展を図るというようなことをかなり意識的に戦略的に行っていることは御指摘のとおりである。
 具体的には、ヨーロッパにおいて先月、 欧州委員会が特許を通じた技術革新の促進という提言を出している。 彼らの問題意識としては、 アメリカとか日本と比べると相対的にまだ劣っているところがあり、 制度的に劣っている部分というものを平等化させることによって関係する産業を振興していき、 今後特許政策というものを中核に据えた新たな競争力強化策を築いていくというようなことを提言している。
 アメリカも似たようなことを問題意識として持っており、 今月の初めに競争力評議会のレポートが出されたがそれによると、 80年代においてはうまく知的財産権政策を活用することによってアメリカの持っていたポテンシャル、 産業の持っていた競争力をうまく育てることによって今日の非常に好調な経済回復をしたという認識は持っているが、 しかし90年代に入って、80年代に行った知的財産権政策というものをうまく活用していないのではないかという批判が国内で出てきて、 早急にもう一度この観点から競争力の強化ということを考えてはどうか、 という報告がされている。  私どももそういう環境にあるので、 バイオとかソフトといったような21世紀において中核をなすと思われる技術政策については、 決して他国に遅れをとらないよう万全を期してやっていきたいと思っている。
 特に国際面においては、特許庁に工業所有権審議会というのがあり、 この中の国際部会で昨年の年末からつい最近まで非常に熱心な議論をして頂いて、 今後日本としてそういう国際環境の中でどうあるべきかということについての提言も頂いている。 そういうものを十分に参考にしながら、 いろいろな場を通じて我々の意見というものを主張し、 世界的な制度調和ということに率先して取り組んでいきたいと思っている。

畑 議員

 あれだけトップを走っていると言われている米国が、 さらに頑張らなくてはいけないと国内で批判を受けていると聞くと、 背筋が寒くなる思いがするが、是非今の長官の意気込みのとおり頑張って頂きたい。
 日本だけでこの問題を考えているとは思わないが、 ではアジアというくくりでどう考えるのか、 あるいは欧米列強を目前にしてどう考えるのか、 そして研究開発機関と民間との連携をどう考えるのかなど、 知的財産権をめぐってはいろいろな問題があると思う。 そういう意味で知的財産権の施策というのは、 総合的な見地から考えていかなければならない。
 こうした問題を根本的に解決しようとするならば、 やはり現在分野別に複数の省が担当している知的財産政策を一本化し、 仮にであるが「知的財産庁」とでも呼ぶべき機関を設置して戦略的かつ迅速に取り組むべきではないか。 ただそういう組織の枠組みを根底から見直すという課題については、 それを提案し、実行して行くのはわれわれ政治家の役割である。
 そのためには、国会議員が知的財産こそ21世紀におけるわが国の経済産業の原動力であるということを認識して、 一致団結して知的財産政策を進めなければいけない。 大臣はこの問題に最も造詣の深い一政治家として、 知的財産政策の一本化ということについてどのような見解をお持ちか。

与謝野 通産大臣

 知的財産権に関する行政組織については、 基本的な法目的の相違を踏まえて編成されているわけである。 特許法は産業の発達に寄与することを目的とし、 著作権法は文化の発展に寄与することを目的とする、 というようにそれぞれ法目的を異にしていることを踏まえて、 特許庁と文化庁がそれぞれの法律を所管しているのが現在の体制である。
 通産省としては、最近権利侵害への対応の強化等共通の課題も出てきているので、 関係省庁との間で具体的な施策の検討に際して、 審議会等の委員として相互に参画し合うなど協力連携を強化してきているところである。 こうした交流を通じて、今後とも整合性のとれた戦略的な政策の推進に努めていく。
 なお今、文部省・文化庁と話をしていて、 通産省から文部省・文化庁に出向して著作権法の勉強をする、 また逆に、文部省・文化庁で必要ならば通産省としても受け入れる、 そのような交流によって相互に特許法のことを理解し、 また通産省も著作権法のことを理解した上でそれぞれの行政を進めていくということの必要性を感じている。

畑 議員

 人事交流を初めとして様々な連携の取り方を模索し、 実行しているということを伺った。 確かに一気に物事を進めるということは難しいとは思うので、 そのように地ならしをしながら、 しかし政策としてはとにかく迅速に事実上政策を一本化させ、 知的財産権における国家戦略として強く打ち出して行かねばならない。 是非より一層環境整備に努めて頂きたい。
 話は変わって、昨今のデジタル・ネットワーク技術の進歩の中で発生している問題について伺いたい。
 デジタル・ネットワーク技術は進歩の速度が非常に速く、 今では画像やデータなどの情報コンテンツの加工・複製がいとも簡単に行われる上に、 しかもほとんど劣化することがない。 このように加工%複製・再発信が可能になったことは、 これ自体は技術進歩のメリットではあるが、 反面、現行の著作権処理の枠組みには収まり切れない新たな問題も発生してきている。
 現在は著作権そのものが単なる権利ではなく、 非常に大きな経済的価値を持つようになってきている。 こういう現状に鑑みて、 著作者人格権の保護規定を初めとして現行の著作権に関する様々な規定が、 情報コンテンツの流通%利用の実態にそぐわなくなっているという声が現場からよく聞こえてくる。 政府としてはこうした実態に対し、現在どのような取り組みを行っているか。

近藤信司 文化庁次長

 近年、デジタル化、ネットワーク化の進展に伴って、音楽、美術、 映画などの著作物の利用形態も多様化し、 その経済的価値にも改めて関心が高まっているところである。
 文化庁としては、このような社会の変化に対応して、 著作権制度の改善を適時適切に行い、 著作者の権利利益を確保していくことが重要であり、 それがひいては文化の発展にもつながっていくであろうと認識している。 法制度の面では、 平成9年にインターネット等に対応した公衆送信権であるとか送信可能権の整備を行ったところである。
 今後も必要に応じて見直しを図っていきたいと考えている。 さらにこういった法制度の整備に加えて、 著作物の円滑な利用を図ることも重要である。文化庁では、 著作物の利用手続円滑化のために様々な分野の著作物の権利情報を一つの窓口で提供するシステムの構想を今推進しているところである。
 また、著作権者に代わって著作権を行使している著作権管理団体のあり方についても見直しを進めているところであり、 時代の変化に対応して的確に、 また効率的な権利処理体制が整備されるよう今後も努力していきたい。

江崎格 産業政策局長

 経済社会の情報化、情報技術の進展に伴って、 いわゆるコンテンツと言われるものの円滑な流通あるいはその利用を図っていくということは非常に重要であるが、 一方において著作権者の保護をきちっと図る、 この二つの要請を両立させるということがますます重要になっいてくという認識を持っている。
 通産省においては、デジタル化あるいはネットワーク化に伴う諸問題について、 産業構造審議会でずっと議論がされてきたわけであるが、その結論を踏まえて、 コンテンツの無断視聴あるいは無断コピーを防止する技術を無効化する装置を販売することが横行している現状に対処するために、 差し止め請求を認めるという内容の不正競争防止法改正案を今国会に提案させて頂いた。 この法案では、著作権法の直接の対象になっていないコンテンツの無断視聴も規制の対象にしているが、 一方において、刑事罰を科さずに民事救済にとどめるというように必要最小限の処置にするという配慮をしている。
 通産省としては今後とも、コンテンツの製作者、コンテンツの提供者、著作権者、 機器のメーカーなどの関係者の間で新しい時代に対応したビジネスの枠組みづくりのための調整が円滑に進められるように、 これから関係省庁とも十分連絡をとりながら適切に対応していきたいと考えている。

畑 議員

 著作権をめぐる権利交渉で折り合いがつかず、 ビデオやDVDのソフトの商品化を結局断念したという件数が、 業界にアンケートをとると6割以上もあるので、 やはりこれは産業の活性化という面から大きな問題である。 しかしその一方で、デジタルコンテンツ製作者側にも著作権など権利問題に関する認識というものがまだかなり低いという、 そういうアンケート結果も出ているので、 関係各省庁がそれぞれバランスをとれるようしっかり連携をとって頂きたい。