質問テーマ
[日本の文化政策・国際文化交流]
質疑要旨
畑 議員文化行政、文化政策についてお尋ねしたい。 諸外国における「文化」と日本における「文化」の認識には大きく開きがあるように思われる。 文化とはその国のあるいは民族の顔であり価値観の表われである。 だからこそ他国の多くではそうした「文化」を政治、経済、外交と深く連動した政策ととらえ、 しかるべき予算、人員を付与し、文化省等の組織を整備している。 日本が外交上、孤立の危機を深める中、その原因の一つとしては、 文化政策の遅れや甘さが挙げられるのではないか。 こうした問題に対処するにあたり島村文部大臣に今後の「文化政策」をどうお考えなのか伺いたい。
島村 文部大臣文化についての認識については畑議員と同じ認識をもっている。 ご指摘の通りである。これからは物の豊かさから心の豊かさを大切にすべきである。 そしてこれからの日本においては「文化の時代」を党派を超えて作っていかなければならないと考えている。 具体的には伝統文化の継承、発展、文化による国際貢献等が挙げられる。 畑議員の文化政策に対する提言は重視し、最大限の努力をしていく所存である。
畑 議員しかし、日本においては、文化の地位は低い。 この風潮は日本の文化予算の低さに反映されている。 予算ばかりが文化政策の取り組みの尺度になるとは言えないが、しかし、 ここではとりあえずの指標として取り上げてみたい。 文部省「我が国の文教政策~文化発信社会に向けて~」という資料による。 94年度、日本の文化予算(文化庁予算)は546億円である。 これは同年度の国の一般会計の0.08%にあたる。 文部省予算全部でも1.1%にしかすぎない。 他の先進国(ドイツ、フランスなど)では国家予算の1%近い文化予算を計上している国もある。 詳しく例示すると、イギリスでは93年度1900億円、 フランスでは92年度2965億円(国家予算の0.98%)、 ドイツでは91年度1054億円(国家予算の0.92%)、 アメリカの場合は主として民間資金で賄われているので、 国は税制優遇等といった間接的な支援をしている。 この場合一律に比較することはできないが、参考までに紹介する。 公的支出は906億円にすぎないが、民間による援助資金は6300億円ある。 では文化庁の文化予算規模は適正とお考えか。 もっと増額が必要と思われる場合具体的にはどのような措置をお考えか伺いたい。
島村 文部大臣文化庁予算について、例えば平成七年度の場合前年度比12.1%増(668億円)、 来年度要求については、18.2%増(789億円)を計上の予定である。 しかし、ご指摘の通り諸外国に比べれば、確かにつらいものがある。 しかし、来年度から思い切った予算増額を要求していく所存であるので是非またご協力頂きたい。
畑 議員予算の伸び率を見れば、その努力は買いたい。しかし、伸び率が大きいといっても、 それはもともとのパイが小さいからである。ところが財政逼迫の折でもあり、 すぐに諸外国に追いつくことはできないということも理解できる。 そこで日本の文化育成には民間資金の活用が有効となると思われる。 そうした活動に対する法的環境整備として、一つには税制優遇措置について、 より拡充することが望まれるがいかがお考えか。
島村 文部大臣現在、芸術、文化の振興につき民間支援の充実が重要であるということは文部省も認識している。 そのために芸術分野の特定公益増進法人制度の拡充を図り、 また、平成六年には社団法人企業メセナ協議会が特定公益増進法人に認定され、 同協議会を通じてなされた寄付については税制上の優遇措置がなされている。 今後も民間による文化支援の促進についてより一層の努力を続けていきたいと思う。
大蔵省税の減免については他方で、減った分を他の国民が負担するということになるが、 この問題については現在ある特定公益増進制度の一層円滑な運営に努めていくつもりである。(また民間一般企業の寄付についても控除枠がある。)
畑 議員 では実際どれくらい活用されているのか。 現在のように税制優遇措置を受けられる公益法人があまりに限られている (法人格取得の手続きが容易でない)と文化振興は進まない。 制度上のみならず、 実際面でどれくらい活用できるのかということを考慮する必要がある。
このことはNPOの法人格の取得をもっと容易にすべきではないのかという問題につながる。 実際この問題については新進党から、 あさってからの臨時国会に「民間非営利公益法人格付与法案」(NPO法案)が、 議員立法として提出される予定である。 この法案によれば法人格の取得は容易になると思われるがこの点につきいかがお考えか。
NPOの制度化については現行の公益法人制度との整合性の問題があるので政府全体で検討する課題である。 現在は経済企画庁を中心に関係省庁で検討されている。 またそうした税制上の優遇措置のみならず、 文部省としてもメセナに関する普及、啓発に努めていく所存である。
畑 議員 確かに経済企画庁を中心に関係18省庁で非営利団体の法人格取得についての勉強会等を開いているということは聞いている。 NPO法案というのは各省庁にまたがって非常に重要な法案であると思われる。 しかし、これまでの進み方をみると、ヒアリングを一回と後は関係省庁の話し合いをしてという具合である。 現実にこれが法制度化するにはたいへんな時間を要すると思われる。 本当に法制度化を考えるのなら、ヒアリングに止まらず、骨子をまとめる等して、 より現実的に進めてもらいたい。
では次に国際文化交流について日本の予算規模について伺いたい。 国際交流の予算については総額で1315億円ある。 これは他の先進国と比較して決して遜色のない数字である。 そして、そのうち940億円を文部省がもっているということだが、 国際交流の予算というと外務省管轄の国際交流基金の予算(281.05億円)を思い浮かべがちである。 実際には国際交流の予算のかなりのウエイトを文部省が管轄し、 また940億円とい大きな額である。日本の国際交流の予算として各省庁 (通産省もふくめて)の横のつながり(連携)はどうなっているのか、 予算の充分な活用はなされているのか。
文部省の場合、留学生の交流のために大きな予算を割いている。
また学術交流や共同研究などにも力を入れている。 そして日本の政府の意志統一については内閣総理大臣のもとに国際交流についての懇談会をもち、 その報告書をもとに国際交流事業を推進しているという状態である。 できるだけ政府の意志統一を図るよう努めている。 そして文化を通じての国際交流により各国の相互理解を深めるのみならず、 日本文化の発展にも寄与すべきであり、文化を通じた国際貢献も必要と考えている。
国際文化交流に関する懇談会の出された資料をみると記述が抽象的で明確な指標や数値目標がない。 この資料によると「国際文化交流予算の大幅な拡充」という項目で 「21世紀初頭にはその事業規模は倍増され」とある。 しかし、「21世紀初頭」、「事業規模」という表現はいずれも曖昧である。 できるだけ明確な数値目標を掲げるべきある。
さらに国際交流基金の予算についてお尋ねしたい。 海外の主な文化交流比較(政府系国際交流団体について) を考えてみると予算、人員配備、事務所数は各国に比べ、きわめて少ない。 総予算についてほとんど変わりはないにも拘わらず、 事業規模についてこのように開きがあるのはなぜか。
一つには人員について、ドイツを例にとるとその大部分はドイツ語の教師であり、 日本の場合日本語の教師は委託で賄っているという事情がある。 もう一つには、事務所数について、 日本の国際交流基金は諸外国に比べて歴史が浅くその蓄積が小さいということがいえる。 なお努力を続けていく所存である。
畑 議員今の御答弁にもある通り、「国際交流事業について後発の日本には蓄積がない」 ということは同じ総予算を取ってもそのままでは他国のレベルに追い付けないということである。 諸外国に追い付くためにはより多くの予算または民間資金の導入が必要となる。 文化庁から文化省への構想は党派を超えて推進されるべきであるので、 日本の文化政策のより一層の拡充に努めて頂きたい。