質問テーマ
[産官学連携の緊密化による産業技術力の強化]産業技術力強化法案質疑
質問のポイント
今法案は産学官連携の推進のため、 通産省が各省縦割りの頚木(くびき)をある意味において乗り越えて、 本質的な問題に深く切り込んだ意欲的な法案であり、評価したい。 しかも恒久法であり、その制定は非常に意義深いものと認識している。
1. 国公立大学における民間からの資金の受け入れ及び使用の円滑化措置について
- 今回の法案の条文には、 第13条に「~国以外の者から提供されるこれらの研究に係る資金の受け入れ及び使用を円滑に行うための措置を講じなければならない」としか書かれておらず「措置」の内容がわからないが、 具体的にはどのような措置が取られ、どのような制度改正が行われるのか。
- これまで、受託研究資金及び共同研究資金については、 民間からの任意の拠出金であるにもかかわらず、予算管理の原則が適用され、 その受け入れや使用がいわゆる「費目区分」や「年度区分」によって縛られていた。
政府のアンケ-ト調査結果でも、民間企業が国と共同研究を行う際の問題点として、 50%近い企業が、この“費目指定”や“単年度予算”をボトルネックとして指摘している。 今回の法案の「措置」により、これらの障害が取り払われ、 研究開発現場での弾力的な予算使用が可能となることは誠に喜ばしい。
そこで執行官庁である文部省・自治省に確認したいのだが、費目区分や年度区分に縛られない予算執行をいつから開始するのか(もちろん今年度から即座に適用してもらいたいが)。 - あわせて確認したいのだが、 現在、毎年度末には次年度の予算執行に関する手続きとして閣議決定がなされ、 そこで目細の設定が義務付けられている。そうした中で、 大蔵省通達において設定すべき「目」として、「産学連携等研究費」も指定されてきた。
当然、今年以降の閣議決定の規定に基づく大蔵省通達においては、「産学連携等研究費」は目細を廃止することになると思うが、その通りか。
また、こうした円滑化措置について、文部省は各国公立大学に対し、 その決定内容を文書で周知徹底すべきだと考えるが、遺漏無く周知は行われるのか。 - ただ大蔵省通達において目細が廃止されたとしても、 実際には民間と大学間の契約形態、あるいは資金の受け入れやその使用方法などに関して、 その「運用」を改めなければ、現実的には資金を自由に使用できない点が多々あるという現場からの不安の声を何件か耳にしている。
そこでこうした不安を払拭するため再度確認をするが、いずれにせよ今年度予算から、 国公立大学に関する委託研究と共同研究については、 国公立大学の先生方は研究目的であれば、「費目区分」に捕われることなく、 民間から提供される資金を使用することができるようになるのか。
また、同じく「年度区分」についても、これに捕われることなく、 国公立大学が民間から複数年度分の資金をまとめて受け入れ、その年度だけでなく、 受け入れの翌年度以降も、その資金を先生方が自由に使用できるようになるのか。
2. 民間企業役員への国公立大学教官ならびに国公立試験研究所研究員の兼業規制の緩和について
- 今回の役員兼業の承認については、国家公務員法103条3項に基づき、 人事院の承認を得た場合に限り、認められることとなった。
その承認基準の中に、「兼業時間」に関する事項がある。 公務員としての職務専念義務が確保できることと規定されているが、 人事院では、「時間外のみ」兼業を認める方針であると聞く。 しかしこれでは、今法律が目指す、 大学教員や研究員が自分の研究成果をもとにベンチャ-企業を起こし、 社長業を行うことが事実上不可能となり、法律の目的そのものに背くことになりかねない。
米国の州立大学では時間内でも兼業が20%は認められている。 これならば週5日のうち1日は、ベンチャ-企業のため従事できるので、 公立大学の教官や国公立研究所の研究者が優良ベンチャーをどんどん起業し成長させて、 文字通り米国の産業技術力を強化し、経済を押し上げている。 せめて米国並みに、兼業時間を設定できないか。 - 産学の連携が癒着につながらないように、 兼業先企業と大学の教官の職務との間に物品調達関係など、 特別な利害関係がないことを、人事院はチェックすることとなっている
当然の措置とは思うが、このチェックが厳し過ぎると、 公正に行われる兼業までもが阻害され、法の本来の目的が達成されない可能性がある。 人事院の裁量でグレーゾーンが広がってゆかないよう、 これだけは犯してはいけないという基準を明確に示し、 それに抵触していないものはすべて認めるという方針で承認には臨むべきだと思うが、 具体的な基準作りは為されているのか。
3. NEDOに業務追加された、研究開発助成に関して
- 今法案には、産業界が必要とする研究テ-マについて、 大学の研究者に研究資金を援助(H12年度分 26億円)することと、 実用化・製品化に直結する応用技術開発に対して支援(同年度分 31億円)することが、 盛り込まれている。それぞれの予算が、 適切な研究テーマや技術開発に充てられるのであれば良いのだが、 その為には予算の配分先を正しく評価し、 選択できる能力を持った人材(目利き)が配分する側に必要となる。 法案では、配分はNEDOが行うことと規定されているが、 はたしてNEDOに、それだけの評価能力を有した職員が存在するのか。 この際、外部評価を導入、つまり民間の専門家に評価してもらうべきではないかと思うがいかがか。
4. 民間から私大への資金提供(寄付、委託、共同研究)の拡充
- 今法案により、国公立大学への多様な資金の流れは改善されたが、 私立大学の中にも国立大学に勝るとも劣らぬ研究成果を上げている大学もある。 日本全体として、産業技術力の強化のため産学連携の一層の活性化を考えるなら、 私立大学の研究開発に対する支援措置をもっと厚くすべきではないか。
政府が負担する研究費は、国立が教官一人当たり1338万円であるのに対し、 私立は一人当たり198万円に過ぎない。しかも委託研究を民間から受ける場合も、 国公立大学は無税なのに対し、私立は請負業に近い扱いがなされ税金の対象となる。 また民間から寄付を受ける場合も、国公立だと寄付金は損金に計上できるが、 私立に寄付する場合だと損金として扱うには厳しい制限がある。
これを機会に、このような教育機関における官尊民卑は改め、 官民大学上げて日本の産業技術力強化にあたれるよう、 予算措置や税制を改めるべきだと考えるがいかがか。
質疑要旨
畑 議員 産業技術力強化法案は、産学官連携の推進のため、 通産省が各省縦割りの頚木(くびき)をある意味において乗り越え、 本質的な問題に深く切り込んだ意欲的な法案であり、高く評価したい。 しかも恒久法であり、その制定は非常に意義深いものと認識している。
まず国立大学における民間からの資金の受け入れ及び使用の円滑化措置について伺いたい。 条文を見てみると、第13条に 「国以外の者から提供されるこれらの研究に係る資金の受け入れ及び使用を円滑に行うための措置を講じなければならない」 としか書かれておらず「措置」の内容がわからないが、 具体的にはどのような措置が取られ、どのような制度改正が行われるのか、 通産大臣に伺いたい。
現在、国立大学あるいは公立大学に対し、 産学官連携のための民間から受け入れる受託研究、 共同研究などの研究資金を実際に出しているが、 国や地方公共団体の会計を通して管理されるため、 有効に使うことがなかなかできないという問題があった。 産業界や学会から、「事務手続きが煩雑で複雑なため、 研究以外に時間が割かれて仕方がない。 研究費の費目が指定されているため大変使いづらい」という問題が指摘されていた。
そこで、こういう問題を全面的に解決するために本法案を策定したわけだが、 第13条において、国と地方公共団体は 「資金の受入れ及び使用を円滑に行うための措置を講じなければならない」 と規定している。本法案が成立すれば、国立大学においては大蔵省が、 公立大学においては自治省が、それぞれ通達や省令の改正などを行って予算の運用制度を改めることで既に合意している。 つまり、法律でまず基本的なことを定めて、 これに基づいて大蔵省、自治省が通達、省令で詳細を規定するという段取りになっている。
もっと具体的に言うと、細かい予算費目の区分を撤廃して、「費目区分」 にとらわれずに資金を使用できるようにする。 民間と大学の間で複数年度にわたる契約の締結を可能として、 複数年度分の資金を一括で受け入れて、 受け入れの翌年度以降もこれを使用することが可能となるように、「年度区分」 にとらわれない資金の使用ができるというようなこと等である。
これまで、受託研究資金及び共同研究資金については、 民間からの任意の拠出金であるにもかかわらず、予算管理の原則が適用され、 その受け入れや使用がいわゆる「費目区分」や「年度区分」によって縛られていた。
政府のアンケ-ト調査結果でも、民間企業が国と共同研究を行う際の問題点として、 50%近い企業が、この“費目指定”や“単年度予算” をボトルネックとして指摘している。今の大臣の答弁のように、 これらの障害が取り払われ、 研究開発現場での弾力的な予算使用が可能となることは非常に画期的であり、 効果的なことであると思う。
そこで執行官庁である文部省・自治省に確認したいのだが、「費目区分」や「年度区分」に縛られない予算執行をいつから開始するのか。
私ども文部省は財政当局とも相談して、 平成12年度から実施すべく各大学等に周知を図っているところである。
中川浩明 自治省行政局長 委託研究や共同研究など民間資金を使用して行う研究の経費については、 今回負担金補助及び交付金の節区分によって一括計上することを可能にし、 資金の円滑な使用に道を開くこととした。委託研究、共同研究契約については、 複数年度にわたる契約を締結することも可能であり、 また基金の設置によって年度区分を超えて複数年度にわたって必要な歳出を確保することも可能である。
当法案が成立すれば自治省としても、 これらの事項について直ちに地方公共団体に対して周知徹底を図り、 本年度中からも委託研究、受託研究、共同研究について弾力的な予算執行が行われるものと承知しているところである。
文部省、自治省とも今法案が成立すれば本年度(平成12年度)から執行するという答弁をいただいたが、 あわせて確認したいのだが、 現在、毎年度末に次年度の予算執行に関する手続きとして閣議決定がなされ、 そこで目細の設定が義務付けられている。 そうした中で、大蔵省通達において設定すべき「目(もく)」 として、「産学連携等研究費」も指定されてきた。
当然、今年以降の閣議決定の規定に基づく大蔵省通達においては、「産学連携等研究費」は目細を廃止することになると思うが、その通りか。
また、こうした円滑化措置について、文部省は各国公立大学に対し、 その決定内容を文書で周知徹底すべきだと考えるが、遺漏無く周知は行われるのか。
去る3月24日に閣議決定された「平成12年度予算執行に関する手続等について」 に基づいて、国立学校特別会計の「目」、産学連携等研究費については、 大蔵大臣の「目」の細分の規定から削除している。
工藤 文部省学術国際局長 大蔵省から答弁のあったように、既に3月24日の大蔵大臣からの通知に基づいて、 各大学に今年度当初から目細を廃止した前提での柔軟な予算執行ができるように通知を発しており、 諸会議での周知も図っている。
本法案が成立した後、さらに具体的な取り扱い等を含めてさらなる周知徹底を図っていきたいと思っている。
今こまごまと伺ってきたが、研究者や学校の先生方は「費目区分」や「年度区分」 にとらわれずに資金が使用できると私は認識したいのだが、 実際には民間と大学間の契約形態、 あるいは資金の受け入れやその使用方法などに関して、その「運用」を改めなければ、 現実的には資金を自由に使用できない点が多々あるという現場からの不安の声を何件か耳にしている。
そこでこうした不安を払拭するため再度確認をするが、 いずれにせよ今年度予算から、国公立大学に関する委託研究と共同研究については、 国公立大学の先生方は研究目的であれば、「費目区分」にとらわれることなく、 民間から提供される資金を使用することができるようになるのか。
また、同じく「年度区分」についても、これにとらわれることなく、 国公立大学が民間から複数年度分の資金をまとめて受け入れ、その年度だけでなく、 受け入れの翌年度以降も、その資金を先生方が自由に使用できるようになるのか。
国立大学の受託研究や共同研究については、 御指摘のように財源が民間からの任意の拠出金であるが、 これによって行われる研究は公務上の研究として位置付けられているので、 予算上は歳出に計上され、 その支出については国会の議決を経て執行されるということについては変わりはない。
ただ従来は、各受託研究なり共同研究の使用使途について、 例えば、「目受託研究謝金」、「目受託研究費」、「目受託研究旅費」 というような区分をしていた。平成10年度に、「その使途区分を『目』で区分すると、 例えば旅費が足りなくなった場合に他から流用するには手続を必要とするため、 円滑な執行ができないという議論があったので、 平成12年度に「目産学連携等研究費」という一本の『目』を設けて、 その『目』の中では大蔵大臣の承認なしに主務大臣限りで弾力的に流用ができるようにした。
さらにその中では、『目』の細分をつくって執行を適正に行うことにされていたが、 具体的には『目の細分を年度中に決めるのではなく、 年度を三回ぐらいに分けて執行状況を見ながら決めていく、 それから『目』の細分の中でも30%以内であれば当然承認を得たものとして自由に流用できるというような形で弾力化を図っていた。
今回の措置は、「目」の細分をそもそも当初から設定しないということで、 研究活動がより弾力的に実施できるようにしたものであり、 決算において研究実績を踏まえた使途区分を明確にしてもらうということにした。
私ども文部省としても、 大学の先生方あるいは職員の方も含めて大学の現場での受け付けの認識を改めてもらい、 外部から受託研究費等で申し出がある相手方にも周知を図る必要がある。
今回の法案の提出を機に、私どもも財政当局と相談し、 目細を廃止することについて事実上関係省庁間では了解を得ているので、 3月13日に既に各大学長に対して予告をしたところである。
大蔵省の方も含めてもう一度伺いたいのだが、 要するに現場からは、「確かに大蔵省通達によって目細が廃止されたが、 実際には、民間と大学間の契約形態であるとか資金の受け入れやその使用方法などに関して様々な運用規定があって、 これらを詳細に至るまで改めていかないと、『年度区分』や『費目区分』 に捕われない活用方法ができないのではないか。だから、是非そこのところを改め、 必ず現場で資金が自由に使えるようにすることを確認していただきたい」 という声をいただいている。
要するに、研究現場で資金が自由に使えるように運用も改めていくのかということを今一度伺いたい。
現場には色々な従来からの慣行等があるので、 ただ目細を廃止してそれで終わりというわけではなのいので、 全体の取り扱いも含めてかみ砕いて説明し、周知徹底を図る必要がある。
そのため、先ほど答弁したように、 こういうことを予定しいているという通知をあらかじめ3月の中ごろに発しており、 その後3月24日に正式に目細が廃止され、それを受けて再度事務レベルで、 部課長あるいは学校長に対しこれまでに都合4回ほど通知を発している。 さらに、諸会議等を通じて今後周知徹底を図っていきたいと思っている。
地方公共団体における予算執行は、 地方公共団体の責任で行われるべきものであるが、今法案が成立すれば、 13条の趣旨を地方公共団体の公立大学等の現場を含めて十分周知徹底することによってその理解を深め、 受託研究及び共同研究についての弾力的な予算執行は十分可能になると考えている。
寺澤 大蔵省主計局次長 畑議員の御指摘の趣旨が、 大学の先生が自由に何でもできるということであれば、そうではない。 これは公務上の研究として位置付けられていて、 委託者と受託者の総務契約に基づいて、 大学の先生の研究の中で通常の研究活動以外に支障なくできるという前提の中で行われるという制約がある。
費目区分については、目細を事前に設定する必要がないので、 研究の目的の範囲内で使うことができる。ただ、年度区分については、 公務上の研究として位置付けられ、産学連携等研究費という歳出として行われるので、 その歳出については予算の制約を受けるということになる。
せっかく法案を作ったのだから、ぜひ(産業技術力強化という)その趣旨を尊重して弾力的な運用を行っていただきたいと思う。 また現場からの声をフィードバックさせたい。
次に民間企業役員への教官の兼業規制の緩和について伺いたい。 既に休職制度を導入するということが新聞にも報じられており、 これは一歩前進ということで高く評価させていただきたいが、 やはりこれも、色々な発明や発見を行い、 その実用化に向けベンチャー企業を起こしてみたいという教官や研究員からは、 休職制度ができるのはありがたいが、 いま人事院が考えている時間外のみ兼業を認めるという改正では、 実際にベンチャー企業を起こして社長業を行うのは難しいという話を聞く。
例えば、休職するとどういうことになるかというと、 その休職期間が終わった時点で大学か企業かどちらか一方を選ばなくてはいけなくなり、 産学連携が途絶えてしまうことになる。
「今回の法律の趣旨を尊重して、目的を損なうことなく」 という答弁が先ほどあったが、 本当にそうであるならば、「産学連携を緊密にして産業技術力を強化する」 という今法案の趣旨を尊重していただきたい。 例えば、米国の州立大学では時間内でも兼業が20%は認められている。 要するに週5日のうち1日は、ベンチャ-企業のため従事できる。 こういう基盤があったからこそ、シリコンバレーのSUNマイクロのように、 本当に企業と大学が一体になって国を発展させているという好循環が生まれてきていると思う。 それを踏まえて、兼業時間についてもう少し考慮することはできないか。
まず、米国の州立大学と日本の国公立大学の設置形態の違いが具体的にこの兼業問題についてどういう形であらわれているかと言うと、 ア・パブリック・コーポレーション(公共法人)という形になっている州立大学の場合には、 そこにおける州の公務員はボード・オブ・リージェント(理事会)のメンバーだけであり、 それ以外の教職員はボード・オブ・リージェントによって契約によって雇われているという形になる。 従って、身分は大学職員であり州の公務員ではない。
そしてそこにおける勤務の態様は、その理事会において定める定款とか学則に基づいて、 契約によって決まる。契約の一つとして学外活動、これは役員兼業も含まれるが、に着目すると非常に多様な形態がある。
例えば、週1日が20%に相当するというところもあり、 カンザス・ステート・ユニバーシティのように月に2日というところもある。 さらにはカリフォルニア大学のように、 教育と大学業務のためにオフィスにいなければいけないという「オフィスアワー」 を決めて、それ以外は自由というところもある。このように多様性があるが、 重要なことは、そういう勤務態様に依存して、 それに関連して給与を含む処遇が契約によって決まるということである。
これに対して日本の場合は、国立大学の先生は国家公務員であり、 全体に対する奉仕者としてフルタイムで勤務することが前提となっている。 その前提で給与を含めた処遇が法定主義によって定まっている。 よって、フルタイムの中からある部分を兼業時間としてくくり出すことは非常に難しいことであり、 この事情をぜひ御理解いただきたい。
そして、大学教官の場合には勤務時間の割り振り、 試験研究機関の教職員の場合には非常に柔軟なフレックスタイムがあるので、 それを的確に運用してもらえばこの兼業の実は十分あがるものと理解している。
結局、国家公務員法自体に踏み込んで改正をしていかないと、 ここでは水かけ論になってしまうが、 本法律を形骸化させないために私どもも尽力するので、 関係省庁の方々にも協力していただいて、 魂の入った法律になるよう今後とも努力していただきたいと思う。
最後に私立大学の研究開発に対する支援措置に関して伺いたい。
国公立大学への資金の流れについて先ほど細かく伺ったが、 確かに国公立大学への多様な資金の流れは改善されることになるが、 私立大学の中にも国立大学に勝るとも劣らない研究成果を上げている大学があると認識している。
しかし、政府が負担する研究費については国立と私立では非常に大きな格差があり、 国立が教官一人当たり1338万円であるのに対し、私立は一人当たり198万円に過ぎない。 しかも委託研究を民間から受ける場合も、国公立大学は無税なのに対し、 私立は請負業に近い扱いがなされ課税の対象となる。また民間から寄付を受ける場合も、 国公立だと寄付金は損金に計上できるが、 私立に寄付する場合だと損金として扱うには厳しい制限がある。
これを機会に、このような教育機関における官尊民卑は改め、 官民大学上げて日本の産業技術力強化にあたれるよう、 予算措置や税制を改めるべきだと考えるが、 この点について大蔵省と文部省の見解を伺いたい。
国立大学と私立大学における教官一人当たりの研究費については、 政府負担分ではなく、 全体の総額での一人当たりの研究費をみると大体同じレベルになっていると認識している。
ただ、「教官一人当たりの政府負担額が違うのではないか」 という質問の趣旨であれば、 それはその一人当たりの研究費の中には一般的に人件費が含まれているので、 国立大学と私立大学とでは人件費を誰が負担するかということで政府負担割合が違ってくることになる。
いずれにせよ、大学における研究開発の振興については、 競争と評価を通じて適切な資源配分が行われる必要があるということで、 私どもは競争的研究環境の整備の必要性が繰り返し指摘されていることを踏まえて財源を配分することとしており、 研究者一人当たりの研究費を同一にするということではなくて、 国公私立全体を通じて質の高い優れた研究に財源が充てられるようにしていきたいと考えている。
我が国における学術研究をより盛んにするためには、 国公私立を問わず優れた研究者が優れた研究業績を上げてもらうことが大切であり、 私どももそのサポートに力を入れているところである。
そのために、 特に競争的な研究資金としての科研費の充実を中心に毎年努力しているが、 それに加えて私立大学については、 私学助成のほかに私立大学学術研究高度化推進事業等を推進している。 平成12年度予算においては新たに、 バイオテクノロジーの分野において優れた私立大学とベンチャー企業等との産学協同研究を推進するためのバイオベンチャー研究開発拠点整備事業、 トータルで約24億円の事業であるが、 こういう制度の創設などを含めて優れた研究の推進を支援しているところである。 今後とも一層の充実に努めていきたいと思う。
質疑の持ち時間が少なく、準備していた質問を全てすることはできませんでした。 以下の項目は委員会終了後、人事院、通産省より回答を頂きました。
畑 議員 産学の連携が癒着につながらないように、 兼業先企業と大学の教官の職務との間に物品調達関係など、 特別な利害関係がないことを、人事院はチェックすることとなっている。
当然の措置とは思うが、このチェックが厳し過ぎると、 公正に行われる兼業までもが阻害され、法の本来の目的が達成されない可能性がある。 人事院の裁量でグレーゾーンが広がってゆかないよう、 これだけは犯してはいけないという基準を明確に示し、 それに抵触していないものはすべて認めるという方針で承認には臨むべきだと思うが、 具体的な基準作りは為されているのか。
国立大学の教官や国立試験研究機関の研究員は、 全体の奉仕者たる国家公務員であり、今回の役員兼業が、 民間企業との癒着につながるものであってはならないと考える。 そのため、役員兼業の承認に当たっては、 企業と大学教官の職務との間に特別な利害関係がないことをチェックしていくこととしている。
この特別な利害関係の範囲に関する承認の基準については、 人事院規則及び運用通知により明示し、 今回の役員兼業の趣旨が損なわれることのないよう、適切に対処していく所存である。
今法案には、産業界が必要とする研究テ-マについて、 大学の研究者に研究資金を援助(H12年度分 26億円)することと、 実用化・製品化に直結する応用技術開発に対して支援(同年度分 31億円)することが、 盛り込まれている。 それぞれの予算が、適切な研究テーマや技術開発に充てられるのであれば良いのだが、 その為には予算の配分先を正しく評価し、 選択できる能力を持った人材(目利き)が配分する側に必要となる。
法案では、配分はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構) が行うことと規定されているが、はたしてNEDOに、 それだけの評価能力を有した職員が存在するのか。この際、外部評価を導入、 つまり民間の専門家に評価してもらうべきではないかと思うがいかがか。
NEDOでは、 民間の研究開発能力を活用した産業技術に関する研究開発等を行う実施機関として、 専門的知見を有する職員を配置すべく努めているところである。
しかしながら、一般公募に基づく研究開発案件の採択に当たっては、 より適切かつ公正な審議を確保するため、 大学・産業界の専門家等からなる中立的な外部審査委員会を活用している。
本法案において追加されることとなる二つの研究開発助成事業についても、 研究開発案件の採択に当たっては、外部評価を積極的に活用していく所存であり、 これにより、公正かつ透明な審査に基づきより優れた研究開発テーマが採択されるよう努めていきたい。