質問テーマ
[知的財産専門サービス体制の強化]弁理士法案質疑
質問のポイント
1. 弁理士の業務
- 知的財産の事業化や取引活動の支援、そして仲裁手続きの代理業務など、 多岐に亘る業務拡大が認められたわけだが、 この法案にこめられた知的財産サービスの重要な担い手としての「弁理士」 の方々に対する期待のほどを、大臣から語って頂きたい。
- 法案の策定過程では、 弁理士に対する特許侵害訴訟の訴訟代理権の付与が最大の焦点となっていたが、 結局今回は見送られ、司法制度改革審議会において引き続き検討することとなった。 米国と比較した場合、米国での特許弁護士が1万6000人に対し、 日本では弁理士登録をしている弁護士が260余名、 しかし実際に知的所有権関係の事件を担当できる弁護士となると30人程度という厳しい見方もある。 この深刻な彼我の格差を改善せずに、知的財産権をめぐる諸課題の解決はありえない。
現実にユーザーは弁理士に紛争の解決機能を求めており、 弁理士会が中小企業を対象に実施した調査によると、 7割の企業が特許トラブルの最初の相談を弁理士に持ちかけ、 そして弁理士の7割が侵害の判断をつけ、 6割が警告に対する回答書の作成を手掛けている。
今後、更に増大する特許(知的財産権)紛争に迅速かつ的確に対応するためには、 早急に法曹人口そのものを量的に拡大し、 また知的財産権の各案件に応じた技術的な高い専門的知識を擁した法曹人を増やす必要がある。 双方の観点から、弁理士に訴訟代理権を付与することは解決の早道だと思うが、いかがか。
2. 弁理士試験制度と研修制度
- 現在の弁理士人口は、およそ4200人。そのうち3000人が東京・神奈川に、 600人が大阪に集中しており、地方にはごくわずかしか存在していないことは、 知的財産権問題に関して専門の要員を抱えることの少ない中小・ベンチャー企業にとって残念なこと。 弁理士の方たちに全国各地で広く活躍してもらうためにも、 弁理士人口そのものの量的拡大が望まれるところだが、 今回、その目的で弁理士試験も見直される。 具体的にどのような措置により、どれくらいの弁理士人口の増を見込んでいるのか。
- 税理士試験では、受験生の過度な負担を軽減するため、 複数の受験科目のうち既に合格した科目については、 翌年の試験の際免除されるという、いわゆる「合格積み上げ方式」を採用しているが、 弁理士試験においてもこの方式を導入できないのか。
- 今回の法律による業務拡大に伴い、今後弁理士には技術革新や国際化の進展、 あるいは各制度改正などに的確に対応した、 より質の高い知見やノウハウが求められることとなる。 最新の知識や情報にキャッチアップして行くための不断の自己研鑽が必要となるわけだが、 そのための支援体制を政府としてはどのように考えているのか。
私としては、合格者に対しては実務研修制度を導入し、更には5年毎くらいに、 法令の改正事項や先端技術について研修することを義務付けてはどうかと考えるが、いかがか。
3. 特許業務法人制度
- このたび「士(さむらい)業」では公認会計士に続いて2番目に、 弁理士も法人化が解禁されることとなった。 知的財産サービスの質を向上させるためにも、 ユーザーからの依頼に対し複数の人員で対応できることは望ましい。
このような法人化が弁護士にも認められることになれば、 将来的には弁護士と弁理士が共存する、 米国並みの大規模な総合法律事務所がわが国でも実現することとなり、 知的財産権をめぐっての国際競争力がアップすることが期待される。 そのような方向に、現実は向かいつつあると理解してよいのか。 - 自分の依頼事項がどの専門資格者の業務に関係するものであるかを判断すること自体が、 一般の国民にはなかなか難しい。しかしもし弁護士や弁理士に加え、 公認会計士や税理士、司法書士、土地家屋調査士など、 各種の専門家が一つの事務所に集合し、一定の協力関係の下に業務してくれれば、 ユーザー側はワンストップ的に専門資格に係わるサービスを受けられ、 国民の利便性はぐっと向上する。
改定規制緩和推進3ヵ年計画(平成11年3月30日閣議決定)に係わる 「総合的法律・経済関係事務所の開設」について関係省庁間で検討した結果を見ても、 各専門資格者が一つの事務所を共用し一定の関係の下に依頼者のニーズに応じたサービスを提供することは基本的に可能との結論に達している。 こうした「総合的法律・経済関係事務所」の実現に向け、推進策や支援策を通産省は考えているのか。
4. 「参審制」の導入
- 専門的能力のある国民を広く裁判所の審理に登用できる「参審制」は、 ドイツなどでも採用されているように、大陸法系の実務的合理性を有している上、専門家の声を素直に認める日本の風土にも合って、日本でも採用されれば有効な制度だと思うがいかがか。
質疑要旨
畑 議員 現行の弁理士法は、大正10年制定という大変古い法律で、 それを抜本改正するのが今回の「弁理士法案」である。いかに抜本的であるかは、 通常ならば「弁理士法改正案」とするところを、 「弁理士法案」としていることからも伺うことができるが、 昨今の知的財産権をめぐる大きな動きに対応した重要な法案だと認識している。
情報化社会が急速に進展し、知識やアイディアが大きな付加価値を生み出す 「知恵の時代」を迎え、知的財産権の保護及びその積極的な活用は、 我が国の経済産業活動を活性化し国際競争力を強化する上で、 喫緊の最重要課題であると思う。
今回の法案によって、技術的な専門知識に富んだ弁理士の業務範囲が拡大し、 権利行使や係争処理の手続きが迅速化することによって、 国民の利便性が向上することは大変喜ばしいことである。
知的財産の事業化や取引活動の支援、そして仲裁手続きの代理業務など、 多岐に亘る業務拡大が弁理士に認められることになるが、 この法案にこめられた知的財産サービスの重要な担い手としての「弁理士」 の方々に対する期待のほどを、通産大臣から語って頂きたい。
畑議員が言われたように、現在はまさに「知恵の時代」である。 知的財産の取引が市場で活発にできるような整備、地盤づくりはとても大事である。 そのためには、各般の専門的な知識を有する弁理士の方々が十分に活躍できるような法整備をしていく必要がある。 そこで、ライセンス契約の仲介代理や裁判外の紛争処理等に関して十分活動できる体制を、今回の弁理士法案でつくっていこうとしているわけである。
これからも弁理士の方々がTLO(技術移転機関)の活動や、 中小企業における知的財産活用に積極的に貢献していただき、 そのことが我が国の産業技術力の強化、 あるいは中小企業基本法でも謳われている新しい中小企業の事業の創出等に大きく貢献するものと期待している。
大臣からも大変大きな期待がかけられていることがわかった。 私もこの法案の策定過程を注視してきたが、 最大の焦点となっていた弁理士に対する特許侵害の訴訟代理権の付与は、 結局今回は見送られ、司法制度改革審議会において引き続き検討されることとなった。
米国と比較してみると、米国には特許弁護士が1万6千人いるのに対し、 日本では弁理士登録をしている弁護士は260余名である。さまざまな見方があるが、 実際に専門的に知的所有権関係の事件を担当できる弁護士は30人程度ではないかという厳しい見方もある。 この深刻な彼我の格差がある中で、 知的財産権をめぐって日米でさまざまな攻防が繰り返されているので、 一刻も早くこの状況を改善していかなくてはいけない。
現実にユーザーは弁理士に紛争の解決機能を求めており、 弁理士会が中小企業を対象に実施した調査によると、 7割の企業が特許トラブルが生じた際に最初の相談を弁理士に持ちかけ、 そして弁理士の7割が侵害の判断をつけ、6割が警告に対する回答書の作成を手掛けている。 このように、実務的な業務のかなりの部分を弁理士が担っている。
今後、更に増大する特許(知的財産権)紛争に迅速かつ的確に対応するためには、 弁理士に訴訟代理権を付与することは解決の早道だと思うが、 なぜ今回の法案ではそのことが盛り込まれなかったのか。 いま行われている司法制度改革審議会での検討状況とあわせて法務省に伺いたい。
畑議員御指摘の通り、 特許権に関して弁理士の方々は非常に大きな役割りを果たしているが、 弁護士以外の隣接法律専門職の方々にどの程度訴訟への関与を認めるかということは非常大きな問題である。
法務省としても非常に関心を持って検討を進めているところである。 また、現在内閣に設置されている司法制度改革審議会は、 司法全般について日本の21世紀の司法をどうするかということを審議しているが、 その中で弁護士と弁理士を初めとする隣接法律専門職種の方々との役割り分担をどうするか、 どのような形で訴訟への関与を認めていくのか、 その場合の能力の担保をどうするかという問題について、 利用者である国民の立場にたって広く検討が進められているところである。
政府に置かれた規制改革委員会においても、 この問題が取り上げられて積極的な方向が示されているが、 同時に幅広い観点からこの司法制度改革審議会での審議を期待するという結論も述べられている。
私どもとしても、司法制度改革審議会で国民的見地から徹底的に議論がなされることを期待しており、 またその審議を充実させるために全力を挙げて協力していきたいと考えている。
私どもも党の中でさまざまな研究会、勉強会を開いて精力的に取り組んでいるので、 確かに司法制度に関しては、いま大改革の途中であり、努力されていることはわかる。 ただ、繰り返しになるが、特許、知的財産権紛争は今後さらに増大、激化していくわけである。
この紛争に迅速かつ的確に対応するためには、 とにかく早急に法曹人口の絶対数を拡大しなければならない。 その一方で知的財産権の各案件に応じた技術的に高い専門的知識を擁した法曹人口を早く増やさなければならない、という問題もある。 確かに大所高所からいろいろなバランスをとっていかなくてはいけないこととは思うが、 現状を鑑みて、知的財産権はある意味で戦争のような状況にあり、 法曹人口がやっと米国にキャッチアップできた時点で、 もう勝負は見えてしまっていたということでは取り返しがつかない。 ぜひ柔軟な対応をしていただきたいと思う。
次に弁理士試験制度と研修制度について伺いたい。
現在の弁理士人口は、およそ4200人。そのうち3000人が東京・神奈川に、 600人が大阪に集中しており、地方にはごくわずかしか存在していない。
先ほど大臣から、中小企業の方々の知的財産権問題の宝になってほしいという期待があったが、 そのためにも何とか弁理士そのものの数を増やして、 全国各地で広く活躍してもらうようにしなければいけない。 今回、弁理士試験についても量的拡大が望まれるように見直されるが、 具体的にどのような措置により、どれくらいの弁理士人口の増を見込んでいるのか。
畑議員は自民党の中でも知的財産政策小委員会のメンバーとしてこの問題について活発な議論をされていると伺っている。
畑議員御指摘のとおり、日本の弁理士の数は、 平成12年の1月末現在で4297名となっている。この水準を国際的に比較してみると、 日本の場合、特許の出願件数が諸外国に比べて圧倒的に多いにもかかわらず、 米国の特許弁護士、パテントアト-ニーやパテントエージェント、 欧州の特許代理人の数に比べて大幅に少なくなっている。 大体アメリカの5分の1ぐらいの規模である。
また弁理士は、出願件数の多い企業の知的財産担当部門が集まる大都市にどうしても集中する傾向があり、 実際、東京・大阪地域に約80%の弁理士が集中している。 その一方で弁理士が全くいない県が全国に3県ある。
今回の弁理士法においては、弁理士の試験制度を大幅に見直す。 例えば、予備試験を廃止し、論文試験の中でも選択科目を現在の3科目から1科目に削減していく、 そして技術士など法令で定める者については一部の科目を免除する。 このように試験制度を大幅に見直して量的拡大を図っていきたいと考えている。 もちろん弁理士としての一定の資質を満たすということが大前提であるので、 具体的に弁理士の数がどのくらいに増えるかという数字は申し上げにくいところであるが、 利用者のニーズに十分にこたえられる水準まで増加していきたいと考えている。
また、地方の問題であるが、今回の弁理士法の改正案では、 法人化の解禁とあわせて支所の設置についても解禁することとしている。 つまり、地方に支所をつくれるようになるので、 弁理士の少ない地域においても知的財産サービスの一層の充実が図られると期待している。
確かに地方支所の設置は非常に重要なことであると思う。 資格のある方が常駐していなければいけないという規定が付されているので、 ぜひ質の部分でも遜色のない方々が地方に常駐されることを期待している。
試験制度で過度の負担はかけないという話があったが、 例えば税理士試験の状況を見ると、 こちらは複数の受験科目のうち既に合格した科目については、 翌年の試験の際免除されるという、いわゆる「合格積み上げ方式」を採用している。
税理士の試験は税に関することなので、 毎年税制改正があってアイ・エヌ・ジーで変わっていく科目でさえ合格積み上げ方式を採っている。 一方、弁理士試験は憲法などあまり大きく変わらない法律などが試験科目としてある。 このように比較してみると、税理士試験でも合格積み上げ方式をとれるのであれば、 弁理士試験においてもこの方式が導入できれば、 受験生への過度な負担が軽減されるのではないか。
弁理士試験の負担を軽減し、できるだけ多くの、 しかも若い人が試験に通るようにという方向でいろいろな議論がなされた。 もちろん畑議員ご指摘の「合格積み上げ方式」の議論もあった。
現在の試験科目で言うと、論文試験が合計8科目ある。 特許、実用新案、商標、意匠、条約の工業所有権関係の5法が必須科目で、 プラス選択科目が3科目あり、 合計8科目を一遍に受験して合格しなければならないというのが現状である。
今回の改正で、選択科目を3科目から1科目に減らし、 必須の工業所有権関係については条約の試験を論文試験から削除した。 つまり、工業所有権関係4法と選択科目1科目になったわけである。 工業所有権関係4法はお互い非常に密接な関係にあるので、 これは一遍に勉強した方がいいのではないか、 むしろ全体の科目数を現在の8科目から大幅に減らす方が受験生にとっては負担の軽減としてはそれで十分だろうし、 かつ勉強もしやすいのではないかというのが専門家の間で議論した結論であり、 私どももそれが適当だと考えている。
確かに科目数を減らすことが受験生にとって負担の軽減になるという事実は理解できるが、 ただ、合格率は4%というように非常な難関であり、 また合格者の平均年齢が33歳ということで、かなり高齢という気がする。 今回、科目数を減らしたことでどのような結果が見られるのか、 それを踏まえて必要であればさらなる検討を迅速にとっていただきたいと思う。
試験制度とあわせて、先ほど茂木政務次官からも質の向上が必要だという話があった。 今回の法律による業務拡大に伴い、今後弁理士には技術革新や国際化の進展、 あるいは各制度改正などに的確に対応した、 より質の高い知見やノウハウが求められることとなる。 最新の知識や情報にキャッチアップして行くための不断の自己研鑽が必要となるわけだが、 そのための支援体制を政府としてはどのように考えているのか。
知的財産の戦略的な活用が今日非常に重要になってきている。 今までの状況からさらに何歩も前進していかなければならない。 専門的な知識のある弁理士がどうやって活躍していくことができるかということが最大の課題であるが、 国際化の時代であるから相当視野の広い勉強もしていただかねばならないし、 新しい情報についても即座に取り入れるような態勢が必要であり、 あるいは今回の改正も含めて法律についての万全の知識が必要であるから、 畑議員御指摘のように常に自己研鑽をしていくことは大事なことであると思う。 特に今回の法律改正で、 指導、相談といったようなもう少し突っ込んだことまで行うようになるから、 より自己研鑽が求められることになると思う。
今までも例えば、弁理士会が自ら行っている研修、 あるいは財界が行っている日本知的財産協会による研修など民間が行っている研修と同時に、 特許庁工業所有権研修所などの公的機関が行っている研修もある。 しかし、それぞれがクローズしていて横の交流が余りない。 私はむしろこれらをきちんとネットワークづけて、 講師等の相互派遣などを実現していくことが大事であり、 通産省は積極的に協力をしていきたいと考えている。
法曹関係の方々はすべてが閉じられた中で済んでしまうということで、 弁理士会からもそういう働きかけが今までもあるやに伺っている。 ぜひ大臣のお力で、横の交流、連携をうまくとっていただきたいと思う。
今の大臣の答弁ではどれぐらいの間隔でという話はなかったが、 やはり世の中の変化にキャッチアップしていくためには、 弁理士の方にも5年ごとぐらいに法令の改正事項や先端技術に関して定期的に研修することを義務づけた方がいいのではないかと思われる。
また、司法試験の司法修習制度のように、弁理士も実務研修制度を確立した方が、 より弁理士自体の地位、質の向上に資するのではないかと思うが、 この点についてはどのように考えているか。
今回の弁理士法の改正によって、 新しく不正競争防止法関係の業務や工業所有権に関連する著作権の業務など、 かなり拡大した部分がある。 したがって、ますます自己研鑽を積んで資質の向上が求められていくわけである。
それから、いろいろな新しい保護分野の問題もあるから、 新しい分野の勉強を含めて自己研鑽が求められるので、御指摘のように、 一定の期限を切って義務的な研修を行うということも一つの考え方であると思う。
大変重要な時期に重要な業務の追加がなされ、 また、これからの中小企業を含めた大きな期待もあるから、 そういった期待に応えるためにも弁理士会の方々で自己研鑽の方法を十分考えていただきたいと思っている。 また、先ほど大臣から答弁したような他の研修機関との協力なども含めて、 適切な自己研鑽の方法、資質の向上について考えていきたいと思っている。
やはり、弁理士の方々の自主的な自己研鑽が第一だとは思うが、 通産省、特許庁からも側面的なサポートをぜひお願いしたい。
次に特許業務法人制度について伺いたい。
今回の改正で、いわゆる「士(さむらい)業」では公認会計士に続いて2番目に、 弁理士も法人化が解禁されることとなった。 知的財産サービスの質を向上させるためにも、 ユーザーからの依頼に対し複数の人員で対応できることは望ましい。
このような法人化が弁護士にも認められることになれば、 将来的には弁護士と弁理士が共存する、 米国並みの大規模な総合法律事務所がわが国でも実現することとなり、 知的財産権をめぐっての国際競争力がアップすることが期待される。 そのような方向に、現実は向かいつつあると理解してよいのか。
平成10年から12年に実施される規制緩和推進3カ年計画が閣議決定されているが、 その中に「総合的法律・経済関係事務所」について記されており、関係省庁で検討した結果、 現行法制の下でも基本的に設置は可能であるとの結論が得られている。 すなわち、各種資格者が一定の協力関係の下で同一の事務所を共有し、 顧客のニーズに応じてそれぞれの専門資格にかかわるサービスを提供することは可能である。
ただ、制約条件があり、統一した法人格を持って一つの法人として収入、 責任を混在させるようなことはできない。 それから、名称についても各資格者の内容が明確になるようにする必要がある。 また、各資格者がその資格業務の範囲を超えたりあるいは他の資格者から不当な影響を受けないというような制約がある。
特許業務法人については、社員の中に弁護士、税理士、 公認会計士等の参加を認めることも選択肢になり得ると考えているが、 現時点では、弁護士法、弁理士法、税理士法、公認会計士法のそれぞれの法律上、 例えば弁護士が弁理士に雇用されることは禁止されていると解釈せざるを得ないという状況にある。 畑議員御指摘のように、欧米型の大きな組織に発展させていくためには、 今後このようないわゆる総合法律事務所を開設していただき、 その業務を通じながら今後その可能性を見て、 社会的に必要であれば法的措置を講じていかなければいけないと考えている。
望ましい方向ではあるけれども、 まだまだ幾つか乗り越えなくてはならない問題があるので、 それを乗り越える方向で私どもも努力していくので、 ぜひ政府の方でも努力をしていただきたいと思う。
私自身も全くこういう問題には不案内ではあるが、 自分の依頼事項がどの専門資格者の業務に関係するものであるかを判断すること自体が、 一般の国民にはなかなか難しい。自分が抱えている問題を解決してくれるのが、 弁護士なのか弁理士なのか、あるいは税理士や公認会計士なのか。 どこを訪ねて行けばいいのかがわからないというのが一般国民にとっての最初の難関であり、 問題の解決を遅らせているネックとなっている。
そういう意味では、一つの事務所の中に総合的法律・経済事務所という形で、 各種の専門家が集合し、一定の協力関係の下に業務してくれれば、 ユーザー側はワンストップ的に専門資格に係わるサービスを受けられ、 国民の利便性はぐっと向上する。
これは国民にとって大変ありがたいことである。 ユーザー側がありがたいということは、当然それだけお客がたくさん増え、 業務量が増えていくことになるので、サービスを提供する側にも資することになる。 細田政務次官からも答弁があったように、 改定規制緩和推進3ヵ年計画(平成11年3月30日閣議決定)に係わる 「総合的法律・経済関係事務所の開設」について関係省庁間で検討した結果を見ても、 各専門資格者が一つの事務所を共用し一定の関係の下に依頼者のニーズに応じたサービスを提供することは基本的に可能との結論が出ているのだから、 実際に機能させていくときにどういう問題点があるのかを早急にピックアップし、 法改正が必要であればなるべく早く措置を講じるべきである。 ぜひよろしくお願いしたいと思う。
最後に、若干弁理士法案からは離れるが、「参審制」について伺いたい。
先ほど、知的財産権をめぐって専門的な高い知識を持った法律の専門家が必要だが、 なかなかそう簡単に増やすことができないのが問題だという答弁を法務省の方がされたが、 こうした様々な問題を凌駕していくための一つの解決策として、「参審制」 を検討する余地があるのではないかと常々思っている。
「陪審制」と違って、専門的能力のある国民を広く裁判所の審理に登用できる 「参審制」は、ドイツなどでも採用されているように、 大陸法系の実務的合理性を有していると評価されている。 これは、専門家の声を素直に認める日本の風土にも合って、 わが国でも採用されれば有効な制度だと思うがいかがか。
畑議員御指摘のように、特許関係は非常に専門的な知識が必要となるので、 裁判所においても、技術系の知識を持っている特許関係の調査官を配置したり、 専門家に調停員になってもらう専門調停委員制度をつくるなど、 専門的な知識をもった方々を活用する方策について非常に努力を重ねているところである。
専門的知識を持った人を参審員として参加させる参審制度は、 確かにドイツ等欧米諸国で採用されており、 専門的知識を持った人を活用する方策としてしは検討に値するものであると考えている。
今、内閣に置かれた司法制度改革審議会でも、 この参審制も審議項目として取り上げられており、 また専門的知識を要する訴訟に対する対応ということも検討項目に入っているので、 畑議員から御指摘のあったような事情も踏まえて、 司法制度改革審議会においてこの参審制度の採否について検討が進められているところである。 私どももできるだけその審議に協力していきたいと考えている。
前向きな答弁をいただき、安心した。
さまざまな司法制度改革が今進んでいる。 今回弁理士について広告制限の見直しが行われ、広告が解禁となったが、 この点について弁護士はどうなっているのかと思っていたら、 弁護士の方はいち早く広告制限を撤廃したとのことなので、 スピーディーに改革が進みはじめているということは評価したい。
ただ、それ以上に知的財産をめぐる諸問題は変化のスピードも速く、 そのスケールも地球規模で拡大している。なかなか予想がつかない部分もあるので、 関係省庁はきっちりと連携をとり合って頑張っていただきたい。