日本国憲法施行五十周年という節目を迎えた今年、 国会でも新時代の憲法について議論を深めようと、 いま超党派で「憲法制度調査会設置推進議員連盟」の発足への準備が進められています。 文字通り会の趣旨は、現行憲法の制度などについて調査・検討を加えるため 「憲法制度調査委員会」を常任委員会として衆参両院に設置する事で、 私も一日も早くこの委員会が開かれ、 様々な角度から活発な論議が交わされることを心から願っています。
確かに私が成長する過程での「憲法」とは、 神聖にして触れるべからざるもの、理想的にして完全無欠な 「不磨の大典」であり、敢えてそこに改憲などを唱える者は、 戦前の軍国主義にいまだ取り付かれ、 再び日本を封建的な軍事国家に逆戻りさせることを乞い願っている危険な人たちで、 決して自分自身とは相容れないという漠然としたイメージがありました。 恐らくこうした漠然ながらも、かなり強固な「常識」にがっちりと護られて、 我が国の憲法は誕生からこの50年間という長きに亘り、 改正はもちろんのこと、まともな論議すらされないまま歳月を重ねてしまったのです。
しかし近年、 特に冷戦終結後は国際秩序の流動化に伴い安全保障のあり方も大きく変化し、 また環境権問題や急速な高度情報化社会の進展に伴う情報公開や著作権、 あるいはプライバシー保護の必要性など、 半世紀前には想像も出来なかった新しい権利概念が生じて来ており、 現行憲法との乖離現象も数多く指摘されています。
ちなみに世界各国の憲法と比較した場合、 日本の憲法は制定の時期としては15番目に古く、 しかもわが国の憲法以前に制定された憲法はいずれも既に何回か改正されています。 つまり現行の日本憲法は、世界で最も古い憲法と言えます。 例えば現在使われている憲法の内、 その制定が最も早いアメリカでは18回、スイスは119回、 また日本同様に敗戦国のドイツは43回、イタリアも6回改正を行っています。 常日頃から憲法について論議し、 その時代の社会状況に応じて憲法を改正して行くのが世界の常識ということを、 この統計結果が何より物語っています。
中でも国家の根幹に関わる安全保障の問題と憲法の関係は、 直ちに正面から取り組むべきだと思います。 つまり「集団的自衛権の行使」に関わる問題についてです。 現在の政府見解は、「独立国は皆、集団自衛権を有しているが、 日本は憲法上その行使は許されない」というもので、 とても論理的に理解できるものではありません。 日本は現在アメリカと安保条約を結んでいますが、 安保条約というのは本来、条約を締結した二国間のうち、 もし一方が第3国から攻撃されたら、 その国を守るべく他方も共に戦って敵を倒しますよというものですから、 そもそも集団的自衛権も無しに安保条約を結べるわけが無いのです。 ただ確かに集団的自衛権の乱用は大変問題ですから、 その限定の範囲やケース・バイ・ケースの対処の仕方について、 いざという時のため厳密に詰めておくことが必須であり、 だからこそ徹底した議論が早急に必要なわけです。
ただ中には、そうした論理矛盾も憲法を護るためなら構わない、 必要とあらば解釈の幅を広げることで対応すれば良いのであって、 改憲の必要はないという方がいらっしゃいます。 一番顕著な例は憲法9条の2項で、 そこには「陸海空その他の戦力はこれを保持しない」という条項がありますが、 日本には世界有数の軍事力を擁した自衛隊が厳然と存在しています。 自衛の為だけの軍事力は戦力にあらずという解釈でかろうじて整合性を保っているようですが、 やはり論理的にかなり無理があることは否めません。 第一このように際限無く解釈の幅を広げて行けるのであれば、 明文化されている条文はそれ自体意味を持たなくなり、 憲法はやがて完全に形骸化してしまう危険があります。 解釈の仕方でどうにでもなってしまう憲法を有していることの方が、 有事を想定してきちんとした憲法の見直しを進める事より、 余程恐ろしい事だと私は思います。
日本国憲法を本当に民主的で、人権を尊重し、世界に貢献する平和憲法として、 二十一世紀に亘っても機能させてゆくには、 果たして一指たりとも触れるべきではないのか、 それとも時代に適応するよう要所々々見直しを加えてゆくべきなのか -この機会に国会議員だけではなく、 日本の国籍を有する人たち全員に良く考えて頂きたいと思うのです。
確かに改憲派と言われる議員の中には、 人権意識という点で私とはかなり大きな隔たりを持つ方が多いことも事実です。 でもだからこそ、改憲=軍国主義の復活という短絡的なイメージを払拭し、 オープンな憲法論議が活発に出来る道を開くため、自分のような若い世代の、 しかも人権に重きを置くタイプの議員が積極的に論議に参加してことは それなりに意味のあることだと信じております。 皆さんからのご意見もどうぞお聞かせ下さい。 お待ちしています。