国会のマルチメディア化に向けて(平成9年2月17日)

 今回は先週お約束した通り、 国会内の情報ネットワークの現状とマルチメディア化への取り組みについてお伝えしようと思います。

 まず端的に言って、現在国会内では衆・参両院ともそのLAN構築はほとんど成されていません。 また議員会館の各議員の事務室には、 今のところコンピュータ端末すら設置されていない状況です。 (因みに衆議院では平成9年度に認められた予算によって、 参議院に先んじて今年の秋頃には議員会館の各部屋にパソコンが一台ずつ設置される予定)もちろん私を含め必要性を感じる議員は自己負担で機械を購入・敷設し維持すればいいわけですが、 問題はそのコンピューターを利用する事によって、 衆院・参院の様々なスケジュールや決定事項が掲示されている「広報」 をモニターに呼び出せるわけでもなければ、 国会会議録や両院に付属した調査室の資料を検索できるわけでもなければ、 既にネットワーク化がほぼ完了している各省庁の「霞ヶ関WAN」と結んで資料の閲覧や請求が出来るわけでもないということです。

 阪神大震災の折りに、 総理官邸における情報システムの桁外れの貧弱さが物議を醸しましたが、 トップの官邸にしてそうですから個々の議員の居室や国会議事堂の中は推して知るべしかもしれません。

 例えば各議員のもとには、 各省庁から年間にして電話帳100冊分を優に超えるほどの資料が配布されます。 特に予算や国際条約に関する資料などは大部のものが多く、 中にはうっかり片手で持ち上げようものなら手首を傷めるほどの厚み・重さのものもあります。 こうなりますと、たとえ必要だからといったん自分の本棚に収めても、 なかなかそこから取り出すのも億劫になりますし、 もしやっと取り出してみても欲しい情報を見つけ出すまでに膨大な時間が掛かってしまいます。 もちろん自分の地元に持って返って参考にする事など出来ようはずもありません。 正直な話、日本の頭脳と言われる高級官僚の方々がヨイショヨイショと汗を掻き掻き運んで来た重い資料の山は、 良いところ本棚の肥やし、実際にはそのほとんどがごみ箱へと直行しています。 とにかくそうでもしなければ、 ただでも狭い議員の事務室はひと月も経たない内に資料の山々に席捲されてしまうでしょう。

 なんとかこうした資料こそ一日も早く電子化して、 いつでもどこからでも利用できるようにしてもらいたいものです。 官僚の方達もフロッピーになれば配布は格段に容易になるでしょうし、 紙を使わないで済めば複写にも手間が掛からず、経年劣化の心配もいりませんし、 環境保護の観点からも好都合です。

 そして当然の事ながら、世界中の政府、図書館、 大学などあらゆる機関から瞬時に必要なデータをインターネットを通じて入手する事が可能になりますから、 各議員の情報収集・分析能力は確実にアップし、またそのことは、 アメリカなどと比べれば政策スタッフをほとんど持たない日本の国会議員にとって、 議員立法を促進するためにも必ずや大きな助けとなるはずです。 もちろん各地元や支持団体、一般市民などからの肉声が時々刻々届きますから、 国民一人一人の思いが国政に直接反映される機会は格段に増えることでしょう。

 さて、ここまでは主に国会のマルチメディア化によって、 議員サイドが様々な情報を得られる事によって国政がより充実したものになるという効用を述べて来ましたが、 国会の情報化によって国民側から議会での動きや各議員の活動ぶり、 各党の政策や実行内容を容易に、 またつぶさにチェックできるという利点も重要な要素です。と言いますのも、 現在、マスコミを通じて伝えられる政治家の言動と言えば、 前後の文脈やシチュエーションを故意に省略することによってまったく本人の発言の真意とは異なった解釈がなされてしまう事を狙った、 いわば人の言葉じりを捕らえて揶揄するような記事や、 あるいはたまたま居眠りをしてしまった瞬間を撮影した写真など、 およそ本質的な政策論や政策実行能力とはかけ離れた上げ足取りのものばかりで、 政治不信をいたずらに助長する以外何の目的でこのような報道をしているのかと、 首をかしげることがしばしばです。各議員や政党がどのような政策を打ち出し、 勉強を重ね、実行に及んでいるかなど、 世の中に洪水のように政治に関わる情報が氾濫していながら、 国民は知る機会がほとんど無いのが実状ではないでしょうか。

 このような状況の今こそ、各議員は一人ずつホームページを開き、 積極的に個々の政策なりビジョンなり、活動内容を発信し、 世の中の誤解を正して行くべきだと思うのです。特に私が所属している参議院には、 各分野ごとに高い専門性を持った議員たちが揃っていますので、 それを前面に打ち出したページをそれぞれが作れば、 参議院のホームページはさながら総合大学のように充実したものとなり、 昨今聞こえてくるような参議院無用論など吹き飛んでしまう事と思います。

 という事で、とにかく一日も早く国会を情報化・ネットワーク化しないと、 早晩永田町は「情報の孤島」になってしまいかねないと、 参議院自民党の各集会で発言し、更に幹部会に直訴したところ、 その緊急性ならびに必要性に対し多くの同僚議員から理解と賛同の声が寄せられ、 このたび国会のLAN化をはじめ情報化の促進を目的とした「参議院マルチメディア化推進議員懇談会」を正式に発足させる運びとなりました。 今後も折りに触れ進捗具合をご報告しますので、 皆さんにも応援して頂ければ幸いです。では、また。