安全保障高度情報ネットワーク化研究会 第二回(平成9年6月12日)

防衛庁における情報業務の現状について説明(防衛庁防衛局調査課)

  • まず情報の収集についてですが、大きく6つに分類されます。監視情報というのは我が国の領土・領海・領空あるいはその周辺の地域の監視情報です。次に電波情報というのは、我が国に飛来する電波から得られる情報ですが、画像情報とともに情報本部で収集しています。交換情報というのは、主として米軍などとのやりとりによって得られる情報であり、駐在官情報というのは在外公館にいる防衛駐在官からの情報です。現在33の在外公館に42名の防衛駐在官を派遣しています。公刊情報とは、報道、刊行物等から得られる情報であり、内局・情報本部・各自衛隊それぞれにおいて収集しております。
  • このようにして集めた情報については、処理分析を行います。例えば防衛局では調査課、統合幕僚本部では情報本部、陸幕・海幕・空幕では各調査部調査課で処理分析しています。これらの情報は、内閣総理大臣(官邸)・防衛庁長官・防衛庁内の関係部局・関係省庁などに配布されます。また、防衛白書などで一般にも公開されます。
  • こういった情報処理体制を充実・効率化していくという観点から平成9年1月に情報本部を設置しました。わが国は専守防衛ということを旨としているので、情報の収集分析というのが極めて重要な任務ということになります。冷戦終結後は東西対立の構図は変化しましたが、例えば宗教情勢、民族間の問題といった対立は依然として存在します。こうした国際情勢に的確に対応するためには我が国の情報収集体制を充実していくことが必要です。
  • 情報本部新設前後の庁内組織についてですが、従来の情報処理体制は、内局各幕僚監部、統合幕僚監部といったそれぞれの部署が情報収集し、独自の情報業務を行っていました。そのため防衛庁全体としての総合的な収集・分析が不十分でした。必ずしも効率的な情報業務が行われていなかったわけです。また、各組織に情報専門家の必要性が高まったという問題もありました。こういう問題に対応するため、各種情報を集約し、総合的に処理分析し、そして国際軍事情勢のように自衛隊全体を通じて必要となる戦略的な情報を扱うことを基本的な業務として、情報本部を統合幕僚会議に設置したわけです。
  • 情報本部の概要についてですが、平成8年度における定員は約1580名であり、自衛官と事務官から成り立つ組織です。総合的な分析態勢をとるために自衛官と事務官を配置し、それぞれの経験を踏まえて、業務を行っていこうと考えています。本部長、副本部長、三名の情報官、一名の技術官がおります。その下部組織として、総務部、計画部、分析部、画像部、電波部という5つの部署があります。その他に地方に電波情報の収集に関する業務を行う通信所があります。情報官については、三名おりますが一名は事務官であり、残り二名は自衛官です。技術官は技官であり、本部長の技術専門スタッフとしての業務を行います。
  • 情報本部の基本的な業務については、防衛庁に事務次官を委員長とする情報委員会があり、そこで基本的な活動方針をたてています。情報本部はできたばかりですが、重要な課題として情報の共有化、情報の専門家の育成があり、今後取り組んで参りたいと考えています。

内閣情報調査室と関係省庁間における情報通信の現状について説明(内閣情報調査室)

  • まず現在の情報集約センターは、阪神大震災の反省により平成8年の5月に設置されました。災害などの緊急事態発生時における情報の流れについて、情報源は主に3つです。まず、マスコミ関係であり、一般テレビ・ラジオです。こうしたマスコミ情報の第一報はかなり早くなっています。次に関係省庁からの報告連絡があります。内閣情報集約センターは大地震を念頭において設置されたものですので、専用電話等で結ばれている省庁は現在のところ限定(国土庁、警察庁、防衛庁、海上保安庁、気象庁、消防庁、外務省など)されます。その中の4つの省庁はヘリTVを持っており、その映像も受信できます。しかし、今のところやりとりは電話とFAXが中心です。  3つ目の情報ソースは、NHK、電力各社、NTT、ガス各社、JR各社といった民間公共機関です。
  • こういった情報ソースから収集した情報は、内閣情報集約センターで24時間監視しています。内閣情報集約センターでは、4名が常駐し、5個班の交替で20名が配属されてます。
     収集した各種情報は内閣関係者(総理・官房長官・官房副長官、危機管理チーム)、そして緊急参集チーム(内閣官房副長官、関係省庁局長クラス)に速報されます。緊急参集チームは、やはり地震を念頭に考えられたものですが、これは参集の連絡をするまでもなく、自動的に参集するというしくみになってます。最後にマスコミなどの情報ですが、それらが大きな役割を果たすという経験(阪神大震災)から集約情報は対策本部、関係閣僚会議などに配布されます。
     内閣情報集約センターの今後の課題についてですが、各省庁の初動体勢作りということが挙げられます。繰り返しになりますが、内閣情報集約センターは元々地震を想定してできたものです。しかしながら、今後発生が予想される様々な事態について非常に幅広い対応していかなければなりません。そのためにはスタッフについても幅広い分野の専門家が必要ですし、幅広く各省庁と連携していく必要があります。
  • 従来日本の行政の情報収集は、各省庁が独自に行ってきました。これからの行政全体の情報収集の課題としては、各省庁のネットワークが重要となってきます。そこで考えなければならないのは、ネットワークを構築すると、どうしてもオープンなシステムになるということです。機密性の高い情報をネットワークによってやりとりをするには、セキュリティ上の問題があります。例えば霞ヶ関WANは、各省庁ごとのLANをリンクして霞ヶ関全体のネットワークを作ろうというものです。霞ヶ関WANの問題としても、各省庁が情報共有して情報交換を行うオープンなシステムであり、インターネットに接続されるため、極めて公開性の高いものになることが考えられます。従ってそれを活用しようとした場合、セキュリティの問題があります。
  • 内閣情報集約センターは、現在は電話とFAXで情報のやりとりをしていますが、事態が小さければそれで対応可能ですが、事態が大きくなればとても対応しきれないでしょう。これからはコンピューターの使用を考えなければなりません。情報システムに関しては、それぞれ長所、短所色々な問題がありますが、今後の課題として取り組んでいきたいと考えています。

国会議員よりの質問・意見

  • まず最初に防衛庁に対してだが、 アメリカの情報機関としてCIAやFBI等が考えられる。 それらの機関とのパートナーシップというのは、きちんとできているのか。
  • 統幕に情報本部というものを設置したということだが、 図(防衛庁資料P2)では三幕と統幕が並列に並んでいる。情報共有と言っていたが、 統幕と各幕僚監部との関係はどうなのか。
  • 情報の秘密保持と公開性というのは両方必要であり、矛盾する話である。 今の説明では電話とFAXは、ある意味で機密性が高いと言っていたが、 それはいかがなものか。ネットワーク化しても、 流す情報を暗号化することもできる。そして電波については、 あくまでも郵政省の所管であるので、 郵政省から割り当てられた電波を使うということになる。 しかし、この防衛庁が使う電波の周波数帯が公開されてしまっている。 どんなにデジタル化しようが暗号化しようが、盗聴しようと思えばできるが、 その点、アメリカの暗号化というのは進んでいる。 数年前、アメリカでパソコン通信の暗号化について、 必要であれば国がその通信内容を見てもいいという法律を作ろうとして反発を受けた。 日本はそういう意味でレベルが低いのであろうが、 国ぐるみで取り組まなければならない問題である。 サイバースペースの中でやろうと考えればいくらでもできるはずである。 今後の課題ではなく、今の課題として大きな問題である。 技術的なものであっても緊急性の高い問題として取り組んでもらいたい。
  • 統幕と三幕の関係について、もう少し説明して欲しい。 昨日の勉強会(6月11日第一回勉強会) では、アメリカはそこが一番改善されてシームレスになっていると聞いている。
  • 訓令で決めて、話し合いでやっていくというが、客観的な判断ではない。 情報を隠したりといったことはないのか。
  • こうしたシステムでは、時間がかかってしまう。 常に総理大臣が最終判断を下すわけだから、総理大臣に届くまでに遅れてしまっては、 緊急事態に対応することはできない。 ペルーの事件を見てもわかるようにアメリカは非常に情報が早い。
  • 日本でも、 言えないだけで世界中のどこの火山が噴火してもどこでどの程度というのは、 全てわかる。相当な設備をもっている。
  • 機械は立派なものが入っているかもしれないが、 機械に使われないようにしてもらいたい。
  • 時間も経過したので、ここで申し上げたい。 新官邸の整備は行革の議論で遅れてしまう。 情報化の問題が新官邸の整備の問題と一緒に遅れてしまうか心配である。
    電話とFAXの問題について、霞ヶ関WANにしても確かにオープンシステムだが、 暗号化の技術というのはどんどん開発されている。 せっかくある霞ヶ関WANのシステムであるので、 これを活用することも考えていかなければならない。
    最後に会長にお願いだが、この研究会はただ研究するだけではなくて、 早いタイミングで全体の情報化について提言を出すべきである。
    また情報化を考えるにあたっては、 一度外務省から外務関係の説明を受けるべきである。
  • この研究会は、今国会中に2回の勉強会を行った。 只今具体的なご提言があったが、臨時国会までに問題点など整理して、 できれば臨時国会の開会中に中間とりまとめを出すことができればよいと考える。
    それから第一回の勉強会で言われていたが、現在はアメリカでさえも 独自回線や独自技術を使うにはコストがかかりすぎると判断している。 これからは暗号化の技術を駆使し、秘匿性の問題を解決して、 民間の回線を利用していく必要がある。昨日の勉強会では、 日本はアメリカより35年遅れているという。 これから日本は35年の遅れをキャッチアップして行かねばならない。