『「地域の情報化」ハンドブック』発刊記念シンポジウム (平成10年10月20日)

“自由民主党若手国会議員おおいに語る「情報時代・日本の未来」” における講演録です。

 9月29日、党インターネット委員会が編集、 発行したハンドブックの発刊記念シンポジウムが開かれ、 その中で、畑議員をはじめ若手議員によるパネルディスカッションが行われました。

 急速に進展する情報化の波は、 わが国の社会システムや国民の意識に大きな変革を迫っています。 明確な方向性が求められる中、 インターネット委員会副委員長である畑議員も「情報時代・日本の未来」について講演し、 出席議員と活発な意見交換を行いました。

日時

平成10年9月29日(火) 18:00~19:30

会場

自由民主党本部901号

主催

自由民主党広報本部インターネット委員会

畑 恵 議員 講演要旨

 情報化という流れは、私自身ひとつの革命だと思っています。 インタビューなど受けた際に「革命です」という話をさせていただくのですが、 「仰々し過ぎますよねぇ」と言われて校正の時などに消されてしまうことがあります。 トフラーの『第三の波の政治』を真似するわけではありませんが、 本当に革命的に世の中の組織、ライフスタイル、 人間の意識までを根こそぎ変えていくような大きなトレンドだと思っています。 日本はいま金融システムをはじめ、 ジャパンシステムという大きな問題を抱えており、 世界中から袋叩きにあっているところがありますし、 実際に様々な構造的問題を抱えていますが、 おそらく情報化という波を押し進めていけば、 これらの問題の糸が解けるのではないかと思います。 そういう意味で情報通信に取り組むということは、ジャパンシステムからの脱却、 グローバル・スタンダードに向けての前進という大きな使命も同時に担っていると思っています。

 情報化のトレンドの特徴としては、三点あると理解しています。 第一点は、ボーダーレスです。これは国境だけではありません。 情報というのは継ぎ目がなくて、 網の目のようなネットワークで相互交換していきますから、 どうしても境目というものが消えていきます。 しかし、境目があるとそれが壁になります。情報通信は、 決して通産省や郵政省だけのマターではなくて、おそらく全省にまたがるものです。 したがって、各省庁間はもちろん、 政官民も緊密な連携を取ってゆかなければいけないという性格から政治的にも大きな意味があると思います。

 第二点は、 スピードです。スピードの速さというのは「ドックイヤー」という言葉もありますが、 アメリカでは「ザ・ファスト・イーツ・ザ・スロー」(速い者が遅い者を食べてしまう) という言葉で表現するそうです。 昔は「ザ・ビッグ・イーツ・ザ・スモール」(大きい者が小さい者を食べてしまう) だったのですが、今は速い者が遅い者を食べてしまう。しかも一強百弱の時代です。 一つ強い者が現れると全部を食べてしまうという時代ですので、 スピードに乗り遅れることは致命的な結果をもたらします。

 第三点は、透明性です。日本はいま透明性が欠けているということで、 いろいろなところから問題視されています。このことについても、 かなり力点を置いていかないと情報化時代は到来しませんし、 情報化を進める際の問題も解決できないと思います。

 そういう中で何が必要なのかということについて項目だけを申し上げます。 一番目は、いま申し上げた三つの大きな流れに沿って「構造転換」 をしていくことです。重い重層的な組織から軽い横のネットワーク社会への転換。 いろいろなところからネットワークを通じて自分のところに必要な情報を集めてくる。 人を集める、知恵を集める。これからはなるべく持たない者の方がむしろ勝つ。 ただ全然持たないのではだめで、 どれだけ集めてこられるかが勝負どころとなると思います。 そういう意味での構造転換が必要です。

 二番目は、「世界」を見なければいけないということです。 私達は日本の政治家ですけれども、国益を守るためには、 やはり世界を見なければならない。経済的にいえば世界標準、 デファクト・スタンダードを常に頭に置いて戦略的に物事を考え直さなければなりません。 そのためには、ちょっと刺激的かも知れませんが、 現在のような首相、閣議、与党の三位一体での政策決定のシステムは、 戦略的に物事を遂行していく上で非常に大きなネックとなっているので、 本気で世界標準を獲得したいなら、 この点まで考え直さなければならないのではないかと心配しております。

 三番目は、「通信料の低廉化」です。 これを実現しないかぎり日本の情報化はあり得ないと思いますし、 今すぐアメリカ並みとは申しませんが、『先進国並みの定額制の料金設定、 インターネット型の料金設定にしないと、 日本は二十一世紀を迎えられない』というぐらいの危機感をもって、 郵政大臣にもお願いをしているところです。

 四番目は、「セキュリティー」の問題です。セキュリティーに関しては、 これもグローバル・スタンダードということを考えながら詰めていかなければいけません。 影の部分への対策というのはどうしても遅れがちですが、 これも世界と歩調をとりながら進めていかなければならない問題だと思っています。

 五番目は、「自分らしさのない人間は生き残れない」ということです。 結局、その地域らしさ、その企業らしさ、その人にしかない魅力、 その人にしかない力をもっていない限り埋没してしまいます。なぜなら、 どこからでもいろいろな情報を取ってこられる社会です。 他の人が持っているものを自分がたくさん背負っていても意味がないわけです。 ただ“自分にしかない何か”をもっていれば、それを核として、 その人は生き残っていくことができます。私自身、日本人はアイデンティティ、 特に愛国心という意味で、いま大事な部分をなくしていると感じています。 そういう意味では、日本人としての心の拠り所を大切にする教育が、 ちょっと情報化と離れるように思われるかもしれませんが、非常に重要だと思います。 そしてもう一方で、やはり個というものをきちんと確立する教育が大前提ですので、 両者が情報化を進める上で不可欠の政策ではないかと思っています。


『「地域の情報化」ハンドブック』発刊記念シンポジウム

 自由民主党がインターネット上にホームページを開いたのは平成8年1月でしたが、 以来、2年8カ月が経過致しました。 その間、アクセス件数は累計で1230万件に達し、 ここ一年間の月間平均アクセス件数は60万件を維持しています。 自由民主党広報本部インターネット委員会は、こうした広報活動と並行して、 これまで「情報化」に関するセミナーやシンポジウムを積極的に開催し、 インターネットを軸とした情報システム社会の到来、そのことによる社会の変貌、 とりわけ多くの国民の皆様が感心をお持ちの「情報化」と「地域社会」との関係等について検討を重ねて参りました。 その成果を中間報告的にまとめたのが、『「地域の情報化」ハンドブック』です。

 この本の発刊を機に、さらに21世紀の日本を情報社会の視点から捉えてみたいと考え、自由民主党若手国会議員によるシンポジウムの開催を企画致しました。