六年生の皆さんは、ご卒業おめでとうございます。また保護者の方々も、さぞかしお慶びのことと存じます。
副院長として学院で過ごすようになって、最近「学校とは、そもそもどういうところなのだろう」とよく考えるようになりました。そして「学校とは、生きるために必要なあらゆる力を身につけてもらう場所」というのが、いまの私なりの答えです。
では、生きて行くために必要な力とはなんでしょうか。たとえば漢字も数式も英単語も、ただたくさん覚えて頭の中に詰め込んでおくだけでは、何の役にも立ちません。本当に大切なことはそれらを道具として使いこなして、「いかに自分の身のまわりの問題を解決して行く力」に換えていくかということです。
でも生きる能力をそうやって身につけても、この世の中が生きたいと思えるような素晴らしいものでなければ、生きて行こうという意志、つまり生きる力は生まれません。ですから「作新」では、できるだけ多くの感動にみんなが出会って、「この世の中っておもしろいことや不思議なことや美しいことに満ちていてなんて素晴らしいんだろう」と思ってもらえるよう、先生をはじめ関係者全員が力を合わせています。
そうした中で、昨年12月から給食が変わりました。学校が生きる力を与えるところであるのならば、食べるということは、生きることのイロハのイの字です。もっと生命力に溢れた安全な食材を使い、子供たちが小さな手や口で食べやすく、見た目にもより美しく食欲をそそり、とにかくどの子も食べることが楽しくなるような給食にしたい-それが10月から毎週子供たちと一緒に給食を食べるようになっての私の願いでした。
11月はじめ、給食を担当してもらっている業者の方に率直な子供たちの声と「食べている子供たちの姿を思い浮かべながら作っていただきたい」という私の気持ちを伝えさせてもらいました。そしてもう一つ、給食費の値上げはできないということも。
無理を承知でのお願いでしたから、改善されてもそれほど大きな変化は望めないだろうとなかば諦めていた私の予想は、その一ヵ月後完全にはずれることになります。詳しくは生徒の皆さんや保護者の方々のほうがごぞんじでしょうが、作新の給食は本当においしく楽しく美しくなりました。こうした給食を実現して下った調理師の方から届いた年間計画書のテーマには、奇しくも「生きる力を育む」とありました。
ただこの給食は朝の5時から調理場で奮闘してくださっている調理師さんや栄養士さんの努力によって今日も作られています。生きて行く上で、もう一つ忘れてならない大切なことは、「感謝の心」です。作ってくださった方にありがとうとみんなが言えば、その言葉は調理師さんたちにまた新たな生きる力を与えます。
生きる力をここ「作新」でいっぱい身につけた皆さんがたは、どうかどこに行かれてもその力でより多くの人たちに生きる力を与え続けてください。