「パソコンスタイルブック」5巻(97年秋号), 技術評論社(平成9年11月1日)

情報通信の発達によって社会が革命的に変わるという予感がありました

NHKのキャスターからフリーに転身後、フランスに留学し、文化政策、文化経営学を学ぶなど、常に前進し続ける畑恵さん。そんな畑さんがジャーナリストの世界に限界を感じ、みずから社会を変革するために、政治家への道を選んだのは2年前。畑さんの政治政策のひとつにはコンピュータ・ネットワークによる横型社会の構築がある。畑さんが考える、今の私たちの社会に必要なこと、ネットワーク社会が我々に与えてくれる可能性とは何なのだろう?

 畑恵さんのホームページでは、財政赤字や小子化、高齢化社会など、現在日本が抱えるさまざまな問題点に対する畑さんの考えを知ることができる。畑さんが初めてコンピュータを使ったのは2年ほど前。それからすぐにホームページを立ち上げた。自分の考えを自分の言葉で発表できる場が欲しいと感じたことが、ホームページを作ろうと思ったきっかけだという。

ホームページを作ったきっかけは、自分の言葉で自分の考えを述べをかったから

 「自分の制作をきちんと国民の皆さんに伝えるのはむずかしいんです。マスコミには、黒と言ったことも白と書かれてしまうこともありますから。ホームページでは、まとまった形で自分の考えを伝えることができますし、国民の皆さんから直接意見が聞けるということも、とても大事なことだと思っています」と、畑さん。畑さんのホームページには、エイズ問題や臓器移植問題、民法改正などに関する意見がメールで送られてくる。きちんとした意見を送ってきた人にはちゃんと返事を書く。ただ、送られてくるメールには、最初からケンカ腰のメールも少なくないという。

 「わたしはネチケットというのは守るべきだと思うんです。政治家だから、みんなに頭を下げなければいけない部分もあるとは思うんですけれど、『おまえなんてこんなこと知らないだろう』とか、『政治家なんてこんなもんだろう』とか、いきなり失礼な書き方をしてくる人には、まず叱るんです。ところが、そういうことを響いてくる人って言うのは、メールを出しても返事が返ってこないんですね」。

個人を尊重した横型ネットワーク社会が、あらゆる差別を越えた民主的な社会の到来を促す

 畑さんの政治政策のひとつとして、「インターネットをはじめとする横型ネットワーク社会の構築」が掲げられている。ヒエラルキーに支配されたタテ型組織から、他人を尊重したネットワーク社会の実現によって、あらゆる差別を越えた民主的な社会の到来が訪れると畑さんは考えている。もちろん、女性の社会進出にも大きな威力を発揮するとの考え方だ。

 「在宅勤務はもちろん、回線容量が増えて、本当のマルチメディア社会になれば、仕事の忙しい女性が子どもを預けている保育所にコンピュータの画面から声をかけたりすることもできる。子どもにとってはだいぶ違うと思うんですよ」。

 初めてコンピュータに触れたとき、情報通信の発達によって社会が革命的に変わるのではないかと予感したこと。また、情報通信やマルチメディアという新しい分野なら、ベテランの政治家たちとスタートは同じで、むしろ若い方が柔軟にコンピュータを受け入れることができる。そう考えた畑さんは、情報通信を自分の専門のベースとして、そこを軸に国際協力の問題、エレクトリック・コマース(電子商取引)や、文化的な問題にも関わっていくことにした。現在、畑さんは国会の中でのネットワークの構築、自由民主党内のLAN構築、それから日本全体の国家的インフラとしてのネットワーク社会の構築という、大きく分けて3つの仕事をしている。「お歳を召した方でも政治家って勘がいいんですよね。世の中でなにが起こりそうなのか察知する力は抜群で、私のような1年生議員の話もよく聞いてくれるんですよ」

 エレクトロニック・コマースをはじめとし、お金が絡めば必ず犯罪などのいろいろな問題が起きる。セキュリティシステムの整備や、著作権の問題をどうするかなど、今の時期にきちんと決めておかないと大変なことになる。現在、それを危倶した畑きんは、サイバー社会のいろいろな問題に対処するべく、私的な勉強会を開いている。

 「ネットワークの実用に迫られて、いろんな問題が押し寄せてきた時に、社会 システムが対応できないと危険だと思うんです。その時になって慌てないため に、今から準備を進めていくことが、私たち若い議員の役目だと考えています」。

文/編集部・谷本桐子 撮影/杉山雄樹