質問テーマ
[電子商取引の普及促進]書面の交付等に関するIT利用整備法案 質疑
質問のポイント
1. 電子商取引における規制緩和の必要性
電子商取引のメリットは、迅速・簡便・低コスト。 このような取引において書面交付がどんな場合にでも義務付けられていると、 せっかくのメリットが損なわれ、電子商取引の普及に水を差すこととなる。
- 民-民間で書面の交付などを義務付けている法律のうち電子的手段を認めることに支障がないと認められた50本の法律を一括して改正する姿勢は高く評価でき、 各省庁間の壁を越えて取りまとめにあたった通産省の労を多としたい。 まず電子商取引における規制緩和の必要性、 特にその緊急性についてどのように認識しているか政務次官に伺いたい。
- 私自身も実は2度ほど、ネットオークションに参加したことがある。 最初は有珠山噴火被害者のためのチャリティ・オークションに参加したのだが、 ニュースキャスター当時のスーツを出品したところ思わぬ高値で競り落とされた。
ただこの時は名前を公表したので、 名前を伏せて一般のオークションにチャレンジしてみようとしたところ、 多くの入札者を引き付けるようなページを作るには、 それなりのノウハウと労力が必要であることがわかってきた。 そこでインタ―ネット・オークション会社に出品を代行してもらえないかと問い合わせたところ、 それを行なうと古物営業法に抵触してしまうので出来ないということだった。
しかもこの古物営業法では一万円を超える取引においては、 古物商が中古品の売り手から住所や職業などを記載した上で署名した書面(紙)の交付を受けるか、 あるいは身分を確かめられる資料の提示を受けねばならないとされており、 これではネットオークションの手軽さにはとてもなじまないという話だった。
盗品売買の防止という観点から本人確認が必要なのはわかるが、 来年4月から電子署名・認証法が施行となり、 これを用いれば電子的な手段での本人確認は十分可能だと思う。 来年4月からは電子署名・認証制度を利用して、 古物営業法に定められた本人確認は電子的に行なえると考えてよいのか、 警察庁の見解を伺いたい。 - 11月9日付の日経新聞に、保険商品をインターネット上で販売可能にするため、 金融庁が認可基準を新たに設けることとしたとの記事が掲載されていたが、 その中に「商品の購入申し込み者にクレジット番号を打ち込ませ本人確認を徹底する」 と記載されていた。 保険商品のように高額の商品でさえクレジット番号を打ち込ませる方法が採用されるのであれば、 古物営業法における本人確認も同様の方法を認めてよいのではと思うが、いかがか。
- 電子商取引における規制緩和が必要な事項は、書面交付義務に留まらない。 当初の予定では、 対面行為や事務所の設置などを義務付ける各種法律の改正案を次期通常国会に一括法として提出することになっていたと記憶しているが、 この準備はどうなっているのか。
関係法律の処理が一括ではなく担当省庁ごと個別に対応となると、 改正のスピードが鈍るのではと危惧される。 一括法が無理ならば、せめて改正の時期が遅れないようIT担当室にしっかり指導をお願いしたいが、決意の程をお聞かせ願いたい。
(通信料金の低廉化)
- 電子商取引が拡大するための条件のいろはのいの字は、 低廉な通信料金。一日も早くインターネットの通信料金を月2000円前後の定額制にする必要があり、 これを実現せずして米国並みのIT立国など画餅に過ぎない。
通信料金の低廉化を実現するためには、 通信事業者間に公正な競争環境を整備することが急務だと思うが、 通産省としてどのような見解をお持ちか。 - 公正な競争環境の整備をはかるには、各省庁から独立したいわゆる 「日本版FCC」のような規制機関が必要ではないかと言うのが私の持論だが、 それが難しければせめて公正取引委員会を強化して通信市場も規制してもらいたいと思う。 公正取引委員会は今後通信市場の公正取引を守る上でどのような方針でのぞまれるつもりか、 またそうした業務を遂行する上で人員などの問題は無いのか伺いたい。
2. 消費者教育の強化
- サイバー空間における商取引においては、 消費者保護への配慮を厚くする余りがんじがらめの事前規制を業者側に付してしまうと、 電子商取引の迅速・簡便・低コストというメリットを阻害してしまうので、 むしろ消費者教育を徹底して、いかにだまされない自立した消費者を増やすかに政府は力を注ぐべきだと考える。
電子商取引に関する消費者教育や広報活動の現状についてご説明頂きたい。
3. IT革命における労働市場の弾力化の必要性
- 日本がIT立国たらんと各種の戦略を展開する上で、 今後最大のボトルネックとして浮上してくる問題は、労働市場の硬直性であり、 転職が容易に行なえる環境を整えることが喫緊の課題である。
例えば、年金のポータビリティ化など検討が進められている事項もあるが、 有期雇用契約の問題など規制緩和すべき課題は多い。
多様な雇用契約の選択肢を労使双方に与えるという意味で、 労働者派遣事業において「派遣期間は原則一年未満まで」 という規制を撤廃すべく労働者派遣法を改正すべきだと思うが、いかがか。 - 労働力のミスマッチを是正するためには、 現在の職業安定所のように労働者側のクオリティやバラエティを評価しない仲介では問題の解決は困難で、 やはり有料の職業紹介事業をもっと興隆させる必要がある。 そのためにはこのビジネスが単なる仲継ぎではなく、 仲介にあたって業者が行なった評価について正当な報酬を得られるよう職業安定法を改正せねばならないと思うが、どのように考えるか。
質疑要旨
畑 議員 電子商取引のメリットは、迅速・簡便・低コスト。このような取引において、 依然として“紙”による書面交付がどんな場合にでも義務付けられていると、 せっかくのメリットが損なわれ、電子商取引自体の普及にも水を差すこととなる。
今回の法案では民-民間で書面の交付などを義務付けている法律のうち電子的手段を認めることに支障がないと認められた法律を改正するわけだが、 技術の進歩による環境の変化にできるだけ早く対応すべく50本の法律を一括して改正する姿勢は高く評価でき、 IT立国に向けての志の高さ、意気込みが感じられる。 各省庁間の壁を越えて取りまとめにあたった通産省の労を多としたい。
電子商取引において、規制緩和が必要であることは当然であるが、 いかにスピーディーに行うかというのことがより重要になると思うのだが、 その点をどのように政務次官は御認識されているか。
畑議員が日ごろから御指摘されているように、 電子商取引を促進していくに当たっては、 やはり民間の活力を十分に引き出せる環境を整備していくことが非常に大切だと認識している。 こういう環境の整備をしていくには、まず規制の緩和と、 今御指摘のあったスピード感を持って対応していくということが何よりも重要ではないかと思っている。
今回の書面一括法というのは、 ある意味では電子商取引を阻害する要因を取り除く規制緩和法案であり、 この法案を取りまとめるに当たっては、 関係省庁に御協力をいただいて統一方針の下に取りまとめをさせていただいた。
また、スピード感を持って対応しなければいけないという認識に立って、 調査に入ってから三カ月間でこの法案を取りまとめた。
このように、IT革命のスピードに対応した施策を展開していけるように、 私どもも精一杯の努力をしてまいりたいと考えている。
私自身も実は二度ほど、インターネットオークションに参加したことがある。
一度目は、「楽天」という日本で最大手のインターネットショッピングモールが主催する有珠山噴火被害者のためのチャリティ・オークションに参加したのだが、 以前ニュースキャスターを務めていたこともあり、 そのときの古着を数着出品したところ思わぬ高値で競り落とされた。 以前古着を無駄にしてはいけないと思いリサイクルショップに持っていったことがあるが、 そこと比較すると10倍~20倍以上の値段がついて競り落とされるという結果になり、 私自身も非常に驚いた。
「楽天」は、オークションだけではなくいろいろなお店が入ったショッピングモールもあり、 このサイトに一日にざっと35万人ぐらいのユーザーが訪れるというスケールメリットを持っている。 従って、私如きの古着でも欲しいと言って下さる殊勝な方もいるわけで、 電子商取引のメリットは冒頭に申した3点に加えて、 スケールメリットという点も非常に大きいことを改めて認識した。
ただこの時はチャリティなので私の名前を公表したが、 名前を伏せるとどれだけ入札状況に変化があるか興味があって、 一般のオークションにチャレンジしてみることにした。 が、そえなるとやはり多くの入札者を引き付けるようなページを作るには、 それなりのノウハウと労力が必要であることがわかってきた。
例えば衣服であればデジカメで撮影した映像はもちろん袖丈やスリーサイズなどの細かい寸法、 そしてシミや傷の位置や大きさまで詳細に掲載したり、 若い人たちを引き付けるために友達言葉でコメントを作ったりしなくてはならない。 非常に手間がかかるので、 このインタ―ネット・オークションを主催している会社に出品を代行してもらえないかと問い合わせたところ、 それを行うと古物営業法に抵触してしまうので出来ないということだった。
しかもこの古物営業法では、一万円を超える取引においては、 古物商が中古品の売り手から住所や職業などを記載した上で署名した書面(紙) の交付を受けるか、 あるいは身分証明書や運転免許証など身分を確かめられる資料の提示を受けなければならないとされており、 こういう煩雑な手続があるのではネットオークションの手軽さにはなじまないという話しだった。
盗品売買の防止という観点から本人確認が必要なのはわかるが、 来年4月から電子署名認証法が施行となり、 これを用いれば電子的な手段での本人確認は十分可能だと思う。 来年4月からはこの電子署名認証制度を利用すれば、 古物営業法に定められた本人確認は電子的に行えると考えてよいのか、 所管省庁である警察庁の見解を伺いたい。
警察庁としは、 電子認証法に基づく電子認証が古物取引に伴う相手方の身元確認の手段になる余地はあるものと考えている。
ただ古物営業法は、 窃盗その他の犯罪の防止及び被害の迅速な回復を目的とするものであり、 電子認証法に基づく電子認証制度を活用する場合であっても、 なりすまし等の不正な手段により盗品等をインターネット上の古物市場において処分する犯罪の発生も懸念されることから、 今後とも電子認証制度の具体的な内容等の状況を見極めるとともに、 関連業界等の御意見、御要望を伺いつつ対応していきたいと考えている。
私自身もセキュリティーの大切さは強く認識しており、 またセキュリティーが高くなければ利用も進まないということもよく招致しているので、 今の答弁の趣旨は理解できるが、 ただ、セキュリティーを100%達成しようとすると、 電子商取引の促進自体を阻害しかねないという問題がある。 このバランス調整がこれから問題になってくると思うが、 今答弁されていたように関連業界等の意見・要望をよく聞いて、 ぜひ前向きに検討していただきたい。
そうした中で、11月9日付の日経新聞に、 「保険商品をインターネット上で販売可能にするため、 金融庁が認可基準を新たに設けることとした」という記事が掲載されていたが、 その中に「商品の購入申込者にクレジット番号を打ち込ませ本人確認を徹底する」 と記載されていた。 保険商品のように高額の商品でさえクレジット番号を打ち込ませる方法で本人確認ができるのであれば、 古物営業法における本人確認も同様の方法を認めてよいのではと思うが、いかがか。
先ほども申したように、 古物営業法は窃盗その他の犯罪の防止及び被害の迅速な回復を目的としており、 古物取引における相手方の身元確認はこのための重要な方法の一つである。
御指摘の金融庁の認可基準については承知をする立場にはないが、 本人確認手段としてのクレジットカードの番号については、 他人名義で不正取得したクレジットカードあるいはスキミングしたカード番号により偽造したクレジットカード等による詐欺等の犯罪が多発しており、 社会問題化していることに鑑みれば、 これを古物営業法における身元確認手段とすることについては慎重な検討が必要であると考えている。
なお、警察庁としては、先ほども述べたように、今後とも関連業界等の御意見、 御要望を伺うとともに、 電子認証制度等の状況を見極めつつ対応していきたいと考えている。
今のお答えでは「慎重に」というところに力が入っていたので、 なかなか実現は難しいというニュアンスが感じられた。 確かにいろいろ心配はあるとは思うが、 電子商取引に関係している会社の方々に話を伺うと、 申請や許可をとろうとして役所に伺いを立てると、 担当官庁によって大分温度差があるということを聞く。
こういうことがこちらの所管官庁なら認められるのに、 別の担当官庁では認められないというように、 全体の整合性がとれていないと混乱を招く。 今日は電子商取引に関わる各官庁の方々が集まっているので、 是非整合性のとれた形で全体の基準設定をしていただきたい。
さて、今回は紙による書面交付の義務を規制緩和するということだが、 電子商取引における規制緩和が必要な事項は書面交付義務に留まらない。 他にもいろいろ検討課題が残っており、 対面行為や事務所の設置などを義務づける各種法律の改正案を次期通常国会に一括法として提出することになっていたという報道もされていたし (9月29日付の日経新聞掲載)、党の部会でもそういう報告を受けたことを記憶している。 しかし、最近、各関係部署に伺ってみると、 一括法ではなくなったというようなことも聞く。 関係法律の処理が一括ではなく担当省庁ごと個別に対応となると、 改正のスピードが鈍るのではないかと危惧されるがどうなのか。
先ほど政務次官もスピードが大事だとの答弁をされていたが、 技術革新によって変化した社会状況と現行法律のギャップはできるだけ早期に埋めるべきで、 わずかの遅れが後々取り返しがつかない結果を生むことになる。
一括法が無理ならば、せめて改正の時期が遅れないよう、 各官庁の壁を超えたところできっちり指導、監視をしてもらわなければいけない。 恐らくそういう趣旨の下、先般、内閣内政審議室にIT担当室が設置されたので、 ぜひしっかり指導をお願いしたいが、決意の程をお聞かせ願いたい。
政府として、IT革命の対応においてはスピードを重視して施策の推進に当たってきたところである。
畑議員御指摘の点については、現在他の委員会で審議されているいわゆる 「IT基本法」に基づいて、「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部」 が内閣総理大臣を本部長として設置されることになっている。
この「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部」を中心として、 内閣官房として政府部内の連携をとりつつ、 スピードと適切な対応をきちんと図っていきたいと考えている。
ぜひ力強く推進していただきたい。
「高度情報通信社会推進本部」というものがこれまでにもあったが、 バックアップ体制がある意味で十分ではなかったということもあり、 総理大臣が本部長で通産大臣と郵政大臣が副本部長という形ではあったが、 やはり各官庁を指導するというよりは各官庁から上がってきた資料をまとめるというような、 あくまでも調整ということのみに活動範囲が限定されていたように思われる。 今度は名前も「戦略本部」なので、 調整役に留まらずに力強く御指導賜れんことを願っている。
次にこの法案から少し離れるが、通信料金の低廉化について伺いたい。 電子商取引が拡大するための条件は幾つかあると思うが、 いろはのいの字は何と言っても通信料金を低廉化することに尽きると思う。
今回この質問に先立ち、 電子商取引やインターネットオークションを行っている会社の二十社ぐらいの方々に、 「何か問題点はないでしょうか」とEメールを送って伺ったところ、 圧倒的に通信料金の問題を指摘された。 一日も早くインターネットの通信料金を月2000円前後の定額制、 いわゆるつなぎっ放し、使い放題という状況にする必要があり、 これを実現せずして米国並みのIT立国を目指すと言っても画餅に終わってしまうのではないかと危惧している。
通信料金の話は通信行政であるから郵政省の管轄であるということは十分承知しているが、 この問題の解決に対して担当が違うからと手をこまねいているようでは、 IT活用による経済再生を目指す省として責任を果たしえているとは言い難い。
通信料金の低廉化を実現するためには、 通信事業者間に公正な競争環境を整備することが急務だと思うが、 この問題に関しては先般、 平沼大臣も新聞紙上でNTTの再々編にまで言及されて取り組みに強い意志を示されていたが、 通産省としてはどのような見解をお持ちか、 政務次官の若くてフレッシュな考えで御所見をお聞かせ願いたい。
IT経済社会のインフラとも言うべきネットワークサービスがより安く、 より高品質で、 利用者の多様なニーズに対応した形でサービスが提供されるということは極めて重要だと考えている。
そもそも固定電話とインターネットは概念的には全く別なものであるが、 今までのネットワークサービスにかかわるいろいろな制度や法制というものは固定電話を前提としてつくられていた。 しかし、これからはインターネットという新しいパラダイムシフトに対応した形での制度設計が極めて重要だと思っている。
IT戦略会議でもこの点についてはいろいろ議論がなされており、 11月6日の5回目の戦略会議の中で、今後の重点政策として 「超高速ネットワークインフラ整備及び競争政策」ということで、 これを重点的に行っていかなければいけないということを草案に明確化したところである。
畑議員からフレッシュな考え方をという希望があったので、 個人的な考え方を述べさせていただくとすれば、 やはりこれから競争環境をしっかり整備していくに当たって二つの観点が極めて重要だと思っている。
一つは、エッセンシャルファシリティーのオープンアクセスを確保していくこと、 もう一つは市場独占の弊害を排除して健全なマーケットを育成していくための競争政策を確保していくこと。 こういう観点から新しい制度設計をしっかりやっていかなければいけないと個人的には考えているところである。
今、政務次官が言われたように、やはり私自身も、 通信料金を低廉化させるためには公正な競争環境の整備が必須であると思う。 そのためには様々な方法があるだろうが、独占の排除、 オープンアクセスというのは最も重要な二点だと認識している。
そこで、今度は公正取引委員会に伺いたいのだが、 通信市場における独占排除のための規制というのは、 米国ではFCCという独立した機関がある。日本では郵政省が管轄しているが、 各省庁から独立した「日本版FCC」のような規制機関の方がより公正な競争環境が作られるのではないかというのが私の持論だが、 新しくそのような機関を作るのは現実的に難しく、しかも作るのに時間がかかり、 施策の実施が遅れては元も子もないので、 公正取引委員会を強化して通信市場も規制してもらうというのが最も現実的ではないかと思われる。
先頃から公正取引委員会はNTT東日本に対して、 DSL回線を巡り接続業者の新規参入を妨害した疑いで調査を開始しているが、 今後通信市場の公正取引を守る上でどのような方針で臨まれるつもりか。 また、米国のFCCに関与している方々は弁護士などを合わせると6000人位いると仄聞しているが、 公正取引員会でも人員強化ということが当然必要になってくると思われるがいかがか。
IT革命には光と影の部分があり、 光がよく輝くためには影の部分を無くしていくことが大切であり、 それは私どもの公正取引委員会の仕事の一部をなしているわけである。 独占や不公正な取引方法というのは独占禁止法でかたく禁じているところなので、 その法律に従って適正に処理しており、今後もそうしていくつもりである。
なお、具体的な点は別として、一般的な点を申し上げると、 「政府規制等と競争政策に関する研究会」というのを立ち上げ、 特に電気通信の分野に限っているわけではないが、 競争政策についていかに公正取引委員会が仕事を適正にやっていくかという議論をしているところである。 具体的な事件と一般的な問題の二つの面で、適切に行政を推進したいと考えている。
人員の点については、なかなか人が足りないというのが実態であり、 これまで以上に御支援をいただければ大変幸甚である。
通信市場に限らず公正取引委員会がこれから担われるべき役割はさらに拡大していくであろうから、 私どもも人員増強の点ではなるべくサポートしていきたいと思う。
次に少し視点を変えて、電子商取引における消費者教育について伺いたい。 先日の訪問販売法改正の審議の際、 加納議員から、「サイバー空間における商取引において、消費者保護も大事だが、 そこへの配慮を厚くする余りにがんじがらめの事前規制を業者側に付してしまうと、 電子商取引の迅速・簡便・低コストというメリットを阻害してしまうので、 むしろ消費者教育を徹底して、 いかに騙されない自立した消費者をいかに増やすかに政府は力を注ぐべきだ」 という趣旨の発言をされていたが、私自身も全く同感である。
しかし、これまでの日本人のカルチャーからすると、 はなから人を疑ってかかるとか危険がいつも存在すると認識するのは難しいので、 消費者教育というのは本当に大切だと思う。
電子商取引に関する消費者教育や広報活動の現状についてご説明頂きたい。
電子商取引は消費者の選択の幅を広げるなど消費者の利益を増進させるわけだが、 電子商取引が普及するに当たっては消費者の信頼の構築が不可欠であり、 電子商取引における消費者保護が必要である。 消費者保護の中に消費者教育や消費者啓発というものが位置づけられると思っている。
こうした認識は世界的にも共通であり、 OECD消費者政策委員会が電子商取引上の消費者保護のためのガイドラインを平成11年12月に策定し、 理事会から加盟国に対して勧告をしている。そのガイドラインでも、 電子商取引に参加する消費者が十分に認識した上でオンライン上での意思決定を行うことができるよう政府等は情報提供を行うべきだと述べている。
これを受けて経済企画庁では、ガイドラインを当庁のホームページに載せる、 あるいは消費者の電子商取引に関する情報提供等を行っている。
また国民生活センターでも、 各種広報資料を使ってインターネット関連の消費者トラブルの広報活動を行っている。 最近の例で言うと、本年11月1日発行「くらしの豆知識 2001」(年間約6万部発行) の中でインターネット関連のトラブルについての注意喚起を行っている。 また、10月26日には、「インターネット消費者トラブルの現状と改善策」 と題する特別な調査報告を行っている。文字情報だけでなくテレビでも、 「ご存じですか 消費者ミニ情報」という番組を持っており、 8月16日に情報提供を行っている。
このようにいろいろな情報提供を行っているところであり、経済企画庁としても、 今後とも各省庁あるいは国民生活センターと連携を図って、 電子商取引における消費者教育あるいは消費者啓発の推進に努めてまいりたいと考えている。
一般の方々、高齢者、若年層、それぞれに注意をすべき点は違うであろうから、 めり張りのある行政をお願いしたい。
最後に、IT革命における労働市場の弾力化の必要性という点について伺いたい。
IT革命の中でさまざまな施策を進行させていくと必ず突き当たる問題が、 労働市場の柔軟性をどのように確保するかということである。 日本は労働市場が他国に比べてかなり硬直化しており、 ここが非常に大きなボトルネックになってIT革命が進行しないという危険性が非常に大きく存在していると認識している。 実際、米国があれだけIT革命で未曾有の経済活性化を行っているのに比してEUがなかなか伸び悩んでいるのは、 やはりこの労働市場の問題が非常に大きく影を落としているせいだと私自身は理解している。
機能を持たない仲介業者が淘汰されるいわゆる中抜き現象や、 オートメーション技術による省力化などで既存の雇用が減少する一方で、 IT関連の技術者やサービス産業従事者など新たな雇用も創出される中、 転職が容易に行える環境を整えていくことが喫緊の課題である。
例えば、年金のポータビリティ化を進めるなど検討が進められている事項もあるが、 有期雇用契約の問題など規制緩和すべき課題は多い。
具体的に言うと、多様な雇用計画の選択肢を労使双方に与えるという意味で、 労働者派遣事業において、現在は「派遣期間は原則1年未満」となっているが、 この規制を撤廃すべく労働者派遣法を改正すれば、 雇用の流動化がさらに進むのではないかと思うのだが、見解はいかがか。
もう一つの問題は、労働力のミスマッチが非常に拡大していることである。 これを是正するためには、 現在の職業安定所のように労働者側のクオリティやバラエティを評価しない仲介では問題の解決は困難で、 やはり有料の職業紹介事業というのをもっと振興する必要がある。 そのためにはこの職業紹介というビジネスが単なる中継ぎではなく、 仲介をするに当たってはそれぞれを評価しなければいけない一つの「評価事業」 になるので、その評価に対して正当な報酬が与えられるよう職業安定法を改正し、 そのようなシステムを作るべきではないかと思う。 以上の二点について労働省の考えを伺いたい。
初めに派遣労働の問題であるが、それまで対象業務を限定していたのを、 基本的に対象業務は自由であるというように、 昨年労働者派遣法を改正したところである。
またその際、派遣労働が常用労働者の代替として使われるということについても随分懸念が表明され、 派遣期間は1年以内ということになったわけである。昨年の12月1日から施行され、 そろそろ施行後1年たつので、改正点も含めてこれから実情の調査に入るところである。 改正法には3年後に見直しをするという規定があるので、 それに向けて検討していきたいと考えている。
次に有料職業紹介における料金の問題であるが、これも昨年の職業安定法の改正で、 原則として紹介事業者の料金設定は自ら設定したものを労働大臣に届け出ることによって料金が自由に取れるということになった。 特定の人にサービスをするとか、あるいは非常に高額なものを除いて、 業者が設定した料金表で行えるということになったので、 その運用によって行っていただきたいと考えている。