質問テーマ
[IT政策の推進に向けて]大臣挨拶に対する質疑
質問のポイント
1. 公正な競争環境の整備
プロセスにおいて競争を促進し、結果的に独占的行為の弊害を排除すべき
- サイバー空間の可能性を削いでいる数多くの規制を、 緩和あるいは撤廃する「IT支援包括法」の早期実現
- またそうした事前規制の縛りを緩和するため、ノーアクションレター制度の導入や民間処理紛争制度の整備
- 公正取引委員会の強化
2. IT関連事業の新型公共事業としての位置付け
費用対効果が大きく成長力のあるIT分野へ、建設国債の使途を拡大
3. デファクトスタンダード獲得に向けた国家戦略
省庁や業界そして企業の壁を越え、一丸となってのデファクト作り
- 情報家電など世界標準を獲得できそうな分野を集中的に支援
- ものづくり大国・日本が誇る技術(MT)とITの融合
4. IT人材供給と労働環境の整備
優秀なIT技術者の育成と海外招致を推進
IT化に対応しきれない人々を、成長企業や新興企業へ円滑に移動させるべく労働市場の流動化をはかる
質疑要旨
畑 議員 今回の委員会で私に与えられた時間があいにく15分と短時間なので、 テーマをIT政策に絞り、主に平沼通産大臣に伺いたい。
まず第一に、ITを活用し経済の活性化を図る上で最も必要な環境整備は、 “公正な競争環境の整備”だと思っている。
プロセスにおいて競争を促進し、結果的に独占行為の弊害を排除すべきである。 そのために既に通産省を中心としていろいろな施策が行われているが、 例えば書面の交付、対面や事務所の設置などを義務づけていることなど、 サイバー空間の可能性を削いでいるさまざまな規制があるが、 これを一括して緩和あるいは撤廃しようという法案がこれから作られていくと伺っている。 またそうした事前規制の縛りを緩和して、 チェック体制を事前から事後にシフトするという中で、 例えばノーアクションレター制度の導入や民間紛争処理制度の整備にさらに一層力を入れるということも伺っている。
また、公正取引委員会の強化も必要と思われるが、平沼通産大臣は、 公正な競争環境の整備に向けてどのような考えと意気込みで当たられるか、御所見を伺いたい。
畑議員御指摘のとおり、IT分野における規制改革は非常に重要な問題だと思っている。
先日開催されたIT戦略会議やIT戦略本部でもこの問題点が指摘された。 そしてIT担当大臣である官房長官から、 その規制改革を行うために必要な法制化を一刻も早く行うべきだという指示を各省庁に出したところである。 法制化も念頭に置いて具体的な検討が鋭意進められているところである。
私、通産大臣はIT戦略会議の担当副本部長であり、 御指摘のようなノーアクションレター制度や、 民間紛争処理制度の整備を進めるということも非常に重要なことだと認識しており、 通産省においても、本年4月から産業構造審議会の情報経済部会において、 IT時代の経済活動を支えるルールの整備の一環としてこれは重要な政策課題だ、 という共通の認識の議論が進んでいる。
こうした議論を踏まえながら今一生懸命作業を進めており、 IT時代を迎えるため規制緩和のための一括法案の提出を、 年内を目途に作成しているところである。
特に、産業構造を変革していく上でのさまざまな改正、 改革ということになると、単に通産省という枠に留まらずいろいろな関係省庁にまたがってくるので、 政治家としての手腕の発揮のしどころ、 大臣の双肩に成否がかかっているところが大きいので何とぞよろしくお願いいたしたい。
今の問題とも大きく関連し、昨今非常に注目を集めていることだが、 IT関連事業を新型の公共事業とみなし、 建設国債の使途をIT関連事業など新社会資本整備にも拡大しようということがいろいろなところで論じられている。
やはり、費用対効果が大きくて成長力のあるIT分野に対し、 旧来型の定義に縛られたまま国のお金が回らないというのはどう考えても合点がいかないところだが、 ただ、だからと言って財政法の改正ということにまで踏み込むとなると諸々の問題がある。 財政法の改正をしなくても公共事業というこれまでの定義、 解釈を若干幅広に考えることによってIT分野への投資も可能という説も最近よく聞くが、これに対する平沼通産大臣のお考えを伺いた。
やはり、光ファイバー網の整備など、 低廉で高速なネットワーク環境をいかに迅速に完備するかということが非常に重要である。
一つ大きな問題となったのが、5000億円の公共事業予備費の使い方で、 手前みそになってしまうかもしれないが、 私の地元の岡山市で下水道を使って光ファイバー網の整備を進めているが、 いわゆるラストワンマイル、下水道から学校、 家庭などに直結させるところが公共事業の概念に入らないので、 公共事業として認められない、最後の一押しができないというような状況になっている。
自由民主党の中でも、こういう問題意識の中で財政法4条の解釈をどうするかという議論もされている。 ITの推進においては民需主導で行わなければならないが、官民一体となって、 官が補完的な役割を担っていくということは大切なことであるので、 例えば岡山市の事例に見られるような部分はやはり官が積極的にやっていくべきである。
財政法の見直しも含めて検討をし、このITのネットワークが整備されるよう私も担当大臣の一人として鋭意努力をしていきたいと思っている。
今の論議は建設国債に集中しているところがあるが、 例えば国債全体の問題でとらえても、 投資以上により大きな富を国民にもたらすということであれば、 これは国にとっても国民にとってもプラスということになるので、 是非かつてあった新社会資本の論議をもう一度現実的な形でさらに進めていただきたい。 これでおしまいというようなことにならないように関係省庁とも連絡をとっていただければありがたいと思う。
3番目に、ITの国家戦略にかかわる問題であるが、 デファクトスタンダードの獲得に向けた考えを伺いたい。
それぞれの分野、立場で認識は十分お持ちだとは思うのだが、 やはり正直申して肌身で感じるのは、関係省庁や業界、 あるいは同じ業界の中でも各企業間でそれぞれになかなか足並みがそろっているとは言い難い状況にあるようだ。 国として一丸となって、世界に向けデファクトをとっていこうという戦略がなかなか見えてこない。 これにはやはり通産省が旗振り役にならなければいけないと思う。
例えば、情報家電というのはこれまでの日本の蓄積を生かして、 同じITの分野の中でも日本がデファクトをとれる可能性が非常に多い分野だと思う。 さらには、情報家電も含むが、物づくり大国としての日本が誇るいわゆるMT(マニュファクチャー・テクノロジー)と今のIT(インフォメーション・テクノロジー)を融合させて、 新たな産業革命を起こそうという話も出てきているが、この点について御所見を伺いたい。
これからの市場における優位性ということを考えた場合、 やはり標準の意義というものは非常に大きいと思う。 そういう意味からすると、日本の産業競争力を強化していくためには、 戦略的に国際標準を取得していかなくてはいけないと私どもも認識している。
通産省としては、このような認識のもとに国際標準化推進計画を平成10年に策定しており、 標準をとるという目標を持って技術の開発に重点的に支援をし、 産業界と一緒になってやっているところである。 そして、69にわたる分野について具体的にどのような形で国際標準をとるのか、 1年ごとに計画をきちんと精査して取り組んでいるところである。
情報家電については、例えば家庭内で電灯線等を活用して家電を相互に接続していく技術に関して、 これはデジュール標準、ISOを取得しようという目標を持って技術開発の支援をしているところである。 こうした取り組みによって国際標準化の活動を強化していきたいと私どもは考えている。
また、ITとMTの融合化も極めて重要な問題だと認識している。 職人の技をデジタル化し、それを中小企業者にも活用できるようなものをしっかりつくり上げていかなければいけないという認識を通産省としては持っており、 そのためにデジタル・マイスター・プロジェクトというものを今検討いたしているところである。
米国のサン・マイクロシステムズ社がかなり以前に、 全ての電化製品をコンピューター・ネットワークにつないででコントロールする 「ジニー」というコンセプトを考え、 これには日本の大手情報通信企業もジョイントして、 今だいぶ活用に向け形になってきていると聞いている。是非こういう最新の分野にも、 国の顔としての技術やシステムになり得るわけなので支援をしていただきたいと思う。
また、MTとITの融合をはかるデジタル・マイスター制度についてだが、 現在のデジタル・マイスター制度では、 一つの職人技を一つのデジタルコンテンツとして落とし込んでいくというところまでしか考えられないが、 それぞれのデジタルコンテンツに落とし込まれた職人技を精密に組み上げ、 一つの「完璧な工程」を創り出してはじめて日本の高い技術力として力を発揮するので、 ぜひ一つの完璧な工程に組み上げていくところまでまとめて支援をしていただきたい。 それから、デジタルコンテンツは、お金さえ払えば誰でもどこの国でも簡単に入手できる上、 厳しく規制や管理をしなければ不正使用、不正コピーが続出するおそれがあるので、 ぜひ知的所有権の保護ということについても格段の注意を払っていただきたい。
最後の質問になるが、ITの人材供給と労働環境の整備について伺いたい。
今朝NHKのニュースで、IT技術者が非常に不足しているという旨の報道をしていた。 それによると、IT技術者には昨年の2.4倍の求人数があるそうだが、 優秀なIT技術者を今後どのように国内で育成していくか、 またそうは言っても急激に多くの人数の育成はできないので、 インドや中国など海外からどのように招致してくるのか、 そのためにはどのような規制緩和が必要なのか。また逆に、ITの発展によって、 その流れに対応し切れない人々を、 成長企業や振興企業へ円滑に移動させなくてはならないが、 そのために「労働市場の流動化」をどのように図っていくのか。 この表裏一体の問題である二点について伺いたい。
IT技術者を育成し確保していくことは極めて重要だと私どもも認識している。
通産省としては、まず国家試験の制度を設けており、 ITの技術者あるいは雇用者双方にとって役立つ制度としてこれを実施しているところである。 また、地方自治体と連携して地域ソフトウェアセンターというものを使って高度で専門的な情報技術の研修を実施し、スペシャリストを育成していこうとしている。
また、「これからのITを初めとした成長分野に円滑に労働力がシフトしていくということをしていかなければいけない」という畑議員委員の御指摘は全くそのとおりだと思う。
そのために、先般、労働者派遣事業、職業紹介事業に関する規制緩和が行われたところであり、 引き続き時代の要請に応じた人材の育成あるいは雇用のミスマッチを解消していくために、 今後とも労働省を初めとした関係省庁と連携をして、 柔軟な労働市場を構築していくことに積極的に取り組んでいきたいと思っている。