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作新学院新聞 − 171号

「生きる力」そして「感謝する心」



 卒業を迎えられる皆さん、おめでとうございます。また、その成長を支えてこられたご家族の皆様にも、心からお慶び申し上げます。

 「学校」という場をこれを機に巣立たれる皆さんも多いわけですが、そもそも学校とはどういう存在なのか考えたことはおありでしょうか。自分が通っていた頃には、単に勉強をするところとしか思っていなかった学校が、実は「生きる」ために必要な様々な“力”を身に付けさせてくれた大切な場所であったことを、私は最近になってつくづく思い返します。

 学校では、漢字や数式や英単語や年号や色々なことを覚えます。覚える過程は大体苦痛を伴うもので、こんなことして何になるんだろうと思ったりもします。けれど、若いうちに頭や体に刻み込まれた記憶は決して時間がたっても色褪せることなく、社会に出てからその人にとって一つ一つ役に立つ「道具」となって、人生を便利にしてくれたり、豊かにしてくれたりするものです。

 たとえば自分が欲しいと思う情報を手に入れたり、逆に文章を作って他の人に自分の考えを伝えたりするためにも漢字や英語、更にはそれらを使った読書や作文が必要で、学校の中では単に知識でしかなかった物事が、社会に出たとたん自分が身の回りの問題を実際に解決して行く上での、最も頼りになる「道具」となるのです。また同じものを見たり聞いたとしても、もしその歴史的な背景を知っていたり、科学的な仕組みを知っていれば、世の中がそれだけ不思議や感動に満ちたものと感じられ、生きること自体が何倍も楽しくなります。中には確かに、大人になってあまり役に立たないこともありますが、それさえも、覚える過程で学んだ忍耐や、覚えられたときの達成感は、人生を生き抜く上で実は一番の力となります。

 生きて行くことは、絶対に素晴らしいことでありますが、決して楽(ラク)なことではありません。確率からしたら、楽しいと思う事より辛いと感じる事のほうがよほど多いのが、普通の人の人生だと私は思います。でもだからこそ学校では、人生は生きるに足る本当に美しく素敵なものであると心から実感できる経験を、できるだけ沢山して頂きたい。またそれと同時に、どんな苦難も切り抜け目標に到達できる強靭な精神力と勇気を、日々の辛いこと、悲しいこと、理不尽なこと、悔しいことの中から学び取って頂きたいと思います。

 そしてもう一つ、皆さんが人生を素晴らしいと感じさせてくれる人に出会ったら、必ず感謝の気持ちを言葉や態度に表して下さい。そしてできることなら、自分に苦難を与え結果として自身を鍛えてくれた人たちにも感謝してみて下さい。それは容易なことではありませんが、すべてのことに感謝できる心は、人間にとって最大の「生きる力」となることだけは、どうか忘れないで下さい。


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