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作新学院新聞 − 167号



 このたび作新学院が創立115周年を迎えられましたこと、心からお慶び申し上げます。

 一口に115周年と申しましても、これだけの年月、一つの学校が存続し、なおかつその規模を拡大し、またその名を高めてらっしゃった背景には、関係者の皆様方の並々ならぬご努力と、なによりも強靭な「精神」が存在していたことと思います。数年、あるいは数十年という期間でしたら、とりあえず目先のことや世間体といったことだけに腐心して、事なかれ主義や前例主義に終始していれば、その組織はとりあえず続きます。しかし、やがて活力や清新さは失われ、なによりそのレゾンデートル(存在理由)を見失って、結果的には消えうせてしまうのが世のならいです。

 作新学院の存在を私が初めて知った時、その校名に深い感銘を受けました。何かと古い因習にとらわれがちな日本にあって、これだけの伝統と実績を重ねてきた学校の名前が、「作新」とは!

 そしてそれと同時に私の頭をよぎったのは、世界一美しいと言われるあのパリの街並みを作り上げたフランスの精神でした。パリという街は、確かに古き良き伝統や文化をきわめて厳格に護り、尊重していますが、その一方でとても革新的な側面を持っています。

 例えば有名なエッフェル塔。今でこそパリの象徴のように人々に受け入れられていますが、建設当時はこれまでに見たこともない奇怪で醜悪な建造物ということで、大変な物議を醸しました。他にも、いまだに建設中かと見紛うほどアバンギャルドなポンビドーセンターや、ルーブル美術館の中央広場に造られたガラスのピラミッドなど、建設当初は既成概念に束縛された大方の人たちに激しく非難されながらも、やがてその真の魅力によって人々を魅了し、パリを代表する名所となったものは数知れません。

 このようにパリは、常に新しい血を自らに送り込むことによって、既成の価値観にとらわれたりマンネリに陥ったりして、やがては衰退して行く危険から、長い歳月その身を守ってきました。

 ただその革新的精神も、「時」を重ねたものにしか決して与えられることのない美や価値を、誰よりも理解してのこと。ちなみにパリでは、玄関や窓枠の色や形一つさえ、市の許可無く変更することはできません。それだけのエネルギーをかけて大切に護ってきたものだからこそ、それを乗り越えるものには、またそれ以上に時代を切り開くパワーがあるのだと思います。

 パリ万博の記念塔としてエッフェル塔が建てられたのが、1889年。ほぼ時期を同じくして我が国には、船田兵吾先生によって作新学院が誕生しました。

 時代はまさに文明開化。欧米の文化に比べあまりにも遅れてしまった祖国を救わんと心を燃やす若者たちが、そのためにはまず学問だと、自ら学び互いに教え合ったのが、作新学院の始まりと伺っています。

 21世紀を目前にした現在、残念ながら日本人の多くが、「作新」という言葉に凝縮された高邁な精神を忘れてしまった感があります。古き良き伝統の継承と尊重は、日々新境地を求めてやまない限りない挑戦心と向上心に裏打ちされてこそ、永遠の命を紡ぎ続ける−作新学院の115周年は、そのことを私たちにいま一度教えてくれているようです。


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